ブログ「社長のつぶやき」

2023.07.03 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

鶏卵業界の今から将来の施設園芸業界を考える

 7月を迎えた、秋冬作の始まり、文字通り会社にとって最もホットなシーズンです。数年に及ぶ農業不況・資材・資源価格の値上がり、今年も期待をもって農業者が営農を続けてくれるのか、正直心配です。自分の首を絞めるようですが「施設園芸」の未来になかなか明るい展望が見えてこない。生産者から見れば、設備投資に見合った収益があがらない悩み、消費者から見ればより安全・安心な低価格農産物の要求、国レベルでは環境負荷低減への取り組みや国産有機農業への転換に向けた政策誘導。どれも当面はさらなる生産コスト上昇と農業者の労働強化を強いているように見える。一方で食糧安保は国にとって最重要課題、日本農業の維持発展は欠かせないと言う。多くの国民はこのギャップに気づいているのだろうか?

 2010年前後に施設園芸の規模拡大志向が盛り上がったが、なかなか大型施設の採算性が良いという話も聞かない。確かに大型施設ほど自動化は進めやすく、環境汚染低減装置の導入や自然エネルギーの導入も単位面積当たりのコスト安につながり、有利な面はあると思うが、それに見合った収益は中々上がっていない。多様性概念や作り手個々の「ブランド化」(ストーリー化)にはむしろ逆行している。

 いま私は「園芸業界」の未来を占う意味でも「鶏卵業界」に注目している。畜産農業の中に鶏卵業界は位置づけられるが、園芸農業よりも早くから寡占化と規模の巨大化が進み、ごく少数の農家(鶏卵経営者)がしのぎを削っている。スーパーでは1玉10円台で目玉商品として売られ、しかも日本の卵は生で食用可能(サルモネラ菌はついていない)が絶対条件。価格面では国際競争力の高い唯一の農産物です。
しかしながらここ数年の飼料価格の暴騰と、ほぼ完全に防護が進んだはずの巨大鶏舎での鳥インフルエンザ禍で需給バランスが崩れ、久々に高値圏で推移している。メディアは卵の高騰を連日のように報道し、「こんなに高くてはもう卵は買えない」という庶民の声を伝えている。しかし世界的にはアニマルウェルフェアの考えから、平飼いが普及しつつあり、また国からも国産飼料への切り替えと鶏糞の肥料としての再活用が奨励されている。
個人的にも家畜としての採卵鶏の一生はあまりに過酷だと思う。排卵が始まると(ほぼ毎日1個)、身動きの取れないゲージに1~2年ほど入れられ、採算性が悪くなると(卵を産まなくなると)、産廃業者に処理を依頼され(費用を払う)、命は奪われ、まわりまわって「親鳥」や鶏肉ミンチとして食卓に上がることもある。鶏卵業者を悪く言うつもりはない。巨大な資金をかけ、現実の経営環境の中で必死に戦っているのだ。しかし私も個人的には「命」としてはあまりに過酷ではないかと考える。
また少なくとも巨大施設の均一性よりも「多様性」(平飼いを含む)を増やすほうが中長期的には安全ではないだろうか。ゼロコロナ施策が無理だったように高病原性鳥インフルエンザも発生圃場の処分・隔離だけでは防ぎきれないのではないかと心配している。卵が店頭に並ぶまでにはストーリーがある。10円から200円位の卵を売ることができる社会環境が必要だ。価格は確かに生活者の経済力にもよるが、その人の生き方、考え方にもよる。ただし将来においても10円の卵は生産者・消費者双方の健康問題に関係しそうなのでそれは安全基準を法で整備すべきだろう。鶏卵業界は明らかに世界的に岐路に立っている。
園芸業界は鶏卵業界を良い意味でも悪い意味でも農業業界の先駆者ととらえ、その動向を観察しながら将来のかじ取りをすることが肝要と思う。その際多様性概念は必須だと私は考えます。