農林水産省は2022年度農業生産資材価格指数が前年に比べて9.3%上昇したと明らかにした。一方農産物価格指数は1.4%の上昇にとどまったと発表した。農家の感触はそんなものではないだろう。仕入・物流コストの上昇は20%以上、販売価格はほぼ0%の上昇というのが主観的なイメージと思う。更に消費者の購買指数も100%を割り続け、特に食料品の買い控えが目立つようなので、今後の販売価格の反転も当面は期待薄でしょう。更に9月に入っても猛暑が続き、大雨のニュースは目を引くが、より深刻なのは今後予想される干ばつ被害でしょう。明るいニュースが見いだせない。先日のNHKクローズアップ現代で農業不況の特集を見た。農業の窮状を捉えているなと思ったら、途中から「有機農業」の話題となり、有機農業と国産堆厩肥や汚泥の積極活用に活路を見いだせるような流れになっていた。少し違うのではないかと思ったのは私だけだろうか?
兎にも角にも今年の秋冬以降の農産物価格の推移によっては、相当農業に前向きな専業農家でも子供には継がせたくない(或いはそんな事はとても言える経済環境ではない)と考える農家が圧倒的に増えるのではないかと心配している。この現状を打開する画期的な施策が必要だと思うが、国は日本農業の危機を感じていないのだろうか?或いは打つ手が見つからないのだろうか?と日々個人的には憤慨している。農家の高齢化問題や遊休農地問題は、結果として現れる現象であり、根本的に大事なのは農業が楽しく、やりがいがあり、世や人のためにもなる、結果として努力すれば平均より少しは儲かる職業になるという状況を作り出すことだ。残念ながらピンチです。 大げさなことを言うようですが、現在の為替水準(145~150円/1ドル)が続くようなら、お米を含めた日本産農産物価格は現状の倍位にならないと持続可能性が危ぶまれるのではないかと思う。それには消費者も「もの」の価値観を180度変える位の覚悟が必要でしょう。もちろん安い食品しか買えないという消費者層も多数だと言う現実はある。それは違う政策論で議論してもらうしかない。「より安全で安心なものをより安く」から「より安心で安全、かつカーボンニュートラル、また家畜の生命も大事にする農業をそれに見合った価値で生産者と消費者が納得して買う市場」を目指すのであれば、もはや経済合理性のみを希求する従来の自由経済市場では機能しないだろう。人類は岐路に立っているとさえ思う。人類の食を支える農業問題はカーボンゼロ社会、或いは現代文明の転換を構想する際の一丁目一番地の課題でしょう。