今年もはや11月、暑かった9月が過ぎ10月に入ると急激に秋らしくなってきました。11月から来春までは、いよいよ温暖産地の出番です。弊社も下半期入りです。最大の焦点は、資源高、青果安に苦しんだ過去2年間の状況から脱却できるかどうかです。一番望ましいシナリオは、農家にとっては豊作でありながら、青果価格が上昇することです。
10月は、トマトが異常に高いとテレビや新聞で何度も報道されたが、決して生産農家が儲かっていたわけではないだろう。採れてないだけです。出荷量✕平均価格で言えば、おそらく農家も苦しんでいるだろうと思われる。一番大事なことは、2年に及ぶ資源高(生産費の上昇)に見合う価格形成が、農家が納得できる出来栄えの上で、再生産意欲を掻き立てられるほどの水準で行われるかどうかである。
私は怖い夢を見ることがある。今年は渥美半島を巡回してもいつものようにキャベツの作付けは実施されている。今年こそはと農家は期待しているのだ。その努力には思わず涙腺が緩む。もし今冬の青果価格が暴落したら、来年度は何も作付けされない畑が広がるのではないかとの悪夢を見る。
食料・農業・農村政策基本法の改定が議論されている。世界各地で地域紛争が激化する中、最上位概念は「食料安全保障」の問題となっている。しかし、これは順序が逆ではないかと私は感じる。現に農業で頑張っている農家の皆さんに明るい未来を提示できなければ、誰が「食料安全保障」を担保するのだろうか。
かつて「沈黙の春」という名書があった。来年以降「沈黙の畑」「沈黙の田んぼ」が増えるのではないかと懸念している。これは遊休農地とは違う。作付けしても採算が取れないからやむなく休耕するということだ。農業にも新たな担い手はいるが、正直減りつつある。食料安保議論は、「国防」や将来予想される「飢餓からの回避」を優先論議するほど、現場の実態が放置されるように感じるのは私だけだろうか。