お米の値段が高い。農業の中でも園芸分野はそれなりにわかるが、お米の需給関係については、知れば知るほど闇が深いように思う。日本農業と農家側に立てば、お米の値上がりは大歓迎だ。
そもそもお米は日本の主食なのか? 大半の日本人は即座にイエスと答えるでしょう。私の孫を見てもおにぎりは大好物、ランチ食堂に行けば多くの人はご飯の大盛を注文している。数量的には現在もお米の消費量がトップであるが、金額的にはすでにパン類や麺類を下回っている(総務庁 家計調査2022年より)。おそらく2024年度国民一人当たりのお米の消費量は、50㎏を割っていると推察される。近々のデータでは1962年度は118.3㎏、江戸時代の高級武士ならばもっと消費していただろうと思われる。
国家による減反政策は、2018年に終了したものの、その後も多用途米への補助金行政等によって、微妙にお米の生産量を調整しているのが実情です。国は、食糧米の過剰生産による「米価の暴落」を何よりも恐れ、毎年の需給見通しに合わせて生産量が一致するよう、阿吽の呼吸で調整を続けてきたが、今回その微妙な調整が破綻しかかっているということだろう。そもそも食糧安全保障上、自給率向上を謳っているのに、一方現場は「過剰生産」を恐れているというのだから、何という矛盾だろう。
農林省は、稲作生産者の2022年度10a当たり生産原価を128,932円とはじいているが、2023年まではほとんどの稲作農家がそれを下回る赤字で出荷している。遊休農地が増え、離農者が増えるのも当然です。「農民は生かさず、殺さず」は江戸時代の標語?のはずだが、現在もその思想は官の世界では生きていると思わざるを得ない。大雑把に言えば、昨年のように10a当たり20万円以上の収入が確保できれば、稲作農家も意欲が出てくるだろう。
ルールを変更しないと、今後需給バランスのブレはさらに増すだろう。そもそも今年の6月~8月を無事に乗り切れるかどうかも大変不安だが、政治の季節でもあり、どんな政策が打ち出されるのか見守るしかない。