ブログ「社長のつぶやき」

2019.10.15 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

ゲノム編集食品の今後

 今年の9月、消費者庁はゲノム編集技術で品種改良した農林水産物の大半について「生産者や販売者たちに、ゲノム編集食品であると表示することを義務付けない」と発表した。その理由として「外部遺伝子を組み込まない食品は遺伝子の改変がゲノム編集によるものか、従来の育種技術で起きたのか、科学的に判断できず表示義務に違反する商品があっても見抜けないため」と説明している。はっきりわかるのは、国としては「ゲノム編集食品」の国際競争力の強化、そして商品化に非常に前向きであるということです。これは外部から遺伝子を挿入する「遺伝子組換技術」と「ゲノム編集技術」を区分けし、前者は国民的理解が困難と判断しながらも、後者については世論の支持を得たいという意図が明確と理解する。  
 ゲノム編集は「意図された突然変異」の比喩の如く、その「痕跡」を科学的に実証することは困難とされている。哲学・思想の範疇で言うならば、地球上の生命誕生から今日に至るまで受け継がれたDNAの連鎖を「人間」が操作してよいかどうかという倫理論争となる。
 私の個人的な価値判断を披露することは簡単だが、とても手にあまるのでここでは近い将来の野菜育種の予想を記したい。まずはこの「ゲノム編集技術による商品」が本当に受容される社会になるかどうか、今回国が指針を出したこと(勝負に出たこと)によって、ここ2~3年で方向性が決まるのではないかと思う。国全体としてはおそらく動植物の育種分野よりも医学分野における効能(先天性疾患の未然除去やガン等の重要病の予防・治療技術)の啓蒙が先行すると予想される。デザイナーベイビーに至ってはおそらく否定されるだろう。植物育種技術としての利用については、民間では高収量よりも耐病性、機能性強化のための原種開発に多くの労力が割かれるのではないかと思う。ここで言う原種とは、今後もF1ハイブリッド技術による野菜育種が中心であることは変わりなさそうだが、その「親」のことを指す業界用語です。その親についてはゲノム編集技術の結果産物が増えるだろうという予測です。原種として利用されるのでよりその痕跡の追求は困難となる。また食品としては「高機能」(例えば高GABAや高リコピン酸を含む成分の保証されたトマトの販売、結果として高血圧や病気予防、アンチエイジングに効果が期待される)を売り物にする食品がスーパーマーケットのメインステージを占拠する時代の到来可能性が高い。その価値が広く社会に受容されれば、やがては人類における当たり前の技術になる可能性もあるだろう。弊社は「種」については主に販売業であるが、将来のメイン商品の行方については近未来の経済予測よりも遥かに重要であると思っています。
川西裕康

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