いきなり「ゲノム編集について」のタイトルをつけてみたが、正直さっぱり技術的には全くわからない。DNAの配列を正確に認識し、特定の場所を切断する「酵素」の発見と仕組みの解明がポイントと言われても、ほとんどの人には理解しがたいのが現状だと思う。
しかし一方、近未来最も重要な技術は「AI」(人工知能)と「ゲノム編集」であろうということは直感的に確信している。だから興味があり、解説本を読んだり、業界主催の講演も聞きました。ゲノム編集についての問題意識を私なりの視点で整理してみようと思います。
1.近年CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)という酵素の発見によって、ゲノム編集が非常に容易に、しかも低コストで実施できるようになった。専門分野であれば、大学院生レベルでも実験が可能と聞く。
2.一方、遺伝子組換え技術及びその成果としてのGMO作物について、日本及びヨーロッパでは社会の許容が難しい中で、「ゲノム編集」と遺伝子組換えの差異、境界線の認知が進まないこと、どちらかと言えば思想上は遺伝子組換えと同等と受け取られている傾向が強いことである。カルタヘナ法の適用範囲の有無についても明確な区分ができているとは思えない。
3.しかし1.で述べたように技術的・資金的なハードルが下がる中で、社会の許容が進まないことを理由に研究を停滞させると、米国や中国をはじめとした国々との技術的ギャップが拡大すること、現に日本においても、様々な飼料作物や加工食品、綿を用いた衣料には主にアメリカの遺伝子組換え商品が氾濫している。また今後は医療分野、特にガン治療等において大きな期待がかかるが、その多くの果実はゲノム編集積極国に利益をもたらすだけになる可能性がある。
4.ゲノム編集とは開き直っていえば、ダーウィンの進化論上の理論「突然変異」であり、まさに予期せぬ遺伝子の入替が起きることであり、遺伝子組換えは自然界では起きないが、ゲノム編集はその「偶然」を計画的に起させる技術であるということ。また交雑の後代を商品化すれば、遺伝子組換えの痕跡がなくなる。
5.従って近未来に考えられるのは、各メーカーの研究所レベルでは「ゲノム編集」は急速な勢いで活発に行われる、あるいはすでに激烈な競争に入っている。しかしその利用は「原種」や「親種」としての利用であり、商品としての成果物にはゲノム編集を活用したか否かは明確にしない、あるいは明確にする必要がないという方針が続くのではないかと推察する。その分「親種」の数は倍数的に増えるのではないかと思う。
川西裕康
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