2020年10月26日首相として初めて迎える国会での所信表明において菅首相は2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すと表明した。新型コロナウイルス対策の遅れや、数々の政治スキャンダル、菅さん自身の抑揚のない演説故か、あまり注目されなかったように見えるが、驚くべき画期的な決意表明だと思いました。
その方針は欧州を中心に歓迎、大いに評価されている。
日本の部門別温室効果ガス排出量を調べると、農林水産業からの排出は5,060万トンで全体の3.9%。最大の発生源は燃料燃焼によるCO2(1,700万トン)、稲作や家畜消化管内発酵に伴うメタン(2,120万トン)となっている(農林省データ2016年)。正直想像よりも少ないという印象です。
というのも我々のビジネス上のパートナーは主に「施設園芸」であり、その多くは加温装置のある園芸農家だからです。従って私どもの関心は上記の国家方針に「施設園芸」も影響を受けるのかどうかです。日本は縦長の国土で寒冷地から亜熱帯地まであります。このことは四季を問わず同一作物を供給するには大変有利であり、日本国民は時季を問わず主要野菜をスーパー等で購入することができる。
それでも冬期に新鮮な野菜や花卉を生産するためには加温装置(主に重油焚き加温機)が必要となる。「施設園芸」は年間通して新鮮な農産物を供給する上で、極めて重要な役割を担っています。ただ恐らく農業から縁遠い都会の、しかも環境意識が高い消費者に、実はこの野菜にはこのくらいの重油が使われているのですよと言えば、相当びっくりするのではないかと思います。カーボンニュートラル政策が今後の園芸農業にメスを加えるのかどうか注意深いく観察する必要があります。現場ではヒートポンプ(電気)や木質チップ暖房機、バイオマス起源の暖房装置等も開発されていますが、どれも利点・欠点があり、メジャーな存在にはなっていません。
今後地球温暖化が差し迫った人類存続の危機であるという認識がより多くの人に広まれば、露地ないし無加温ハウスでできる「旬」の野菜で我慢すべき、作れない時季は保存食や加工食品を中心とすれば良いのではという世論がメジャーになる可能性も視野にいれるべきと少し心配しています。
しかし一方農林漁業分野においては、太陽光発電は言うまでもなく、風力、バイオマス、潮力、小型水力発電等をうまくミックスして活用できるようにすれば、他の産業に比べてはるかにエネルギーの自給は可能だとも思います。弊社としても将来のカーボンニュートラルを前提としながらも一年中新鮮な農産物を供給するという課題に対する産業革新に少しでも貢献できる会社でありたいと念願しています。
川西裕康
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