ブログ「社長のつぶやき」

2021.03.03 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

パンデミックと農業の行方

 2021年3月を迎え、昨年来の新型コロナウイルスによる『パンデミック』に変化が出てきました。
近畿・東海・福岡の緊急事態宣言は解除され、関東圏はまだ(3月1日時点)微妙な情勢ですが緩和の方向に向かっています。
3月・4月は花見・入学や卒業、新年度入りに伴う人の移動が活発な時期であり、再拡大の可能性も危惧されています。一方遅ればせながらワクチン接種が始まり、一部の先進国では今夏まで、日本においては年末までには?希望者への接種が実現しそうです。克服に向けて、あるいは「with corona」時代に向けて明るい方向に向かっていると信じたいです。

 しかし農業関係においては、相反するような報道が多く、それを受け取る人によって随分印象が変わります。農業現場の実感として、今年の秋冬野菜市況は総じて安値、過剰生産気味で卸価格は低位に張り付いたままです。また稲作においては2020年産が相当余りそうな情勢の中、2021年の主要産地の食料米作付意欲は落ちておらず、本年度豊作が続くとしたら、生産過剰による米価の更なる暴落が懸念されます。我々の身近な悩みは安値市況であり、生産過剰問題です。

 しかし日本経済新聞2月28日号の農業関連記事は「出稼ぎ減で人手不足 食品6年半ぶり高騰 移動制限 農業生産に影』という見出しが踊っていました。平たく言えば、農業労働力の国際的移動制限による生産力減衰と、増加を続ける輸入農産物の価格高騰や移動制限が将来の食料供給に「影」を落としていると言う内容です。
また一方、国を上げて農業の大規模化を進め、今や「スマート農業」が農政のキーワードのように謳われていますが、直近のプレジデントオンラインに「日本の農業に必要なのは大規模化という発想は根本的に間違っている」と言う記事が載りました。埼玉大学大学院宮崎准教授によれば「政府は農業の大規模化を進めようとしているが、間違っている。ほとんどの農家は、規模を拡大してもコストを削減できない」と言う。
このことは実感として私にも少し理解できる。規模を拡大しても、設備投資や雇用コストの増大等で必ずしも生産コストが下がらない現場をよく見るからです。
また仮に下がったとしても、市況価格の下げのほうが大きいケースも多い。
またアメリカやオランダ並みの大規模農場を前提とした機械やIT設備の開発が進まない上に(マーケットが小さすぎる)、田畑の単位面積が小さく、かつ四季の変化が大きい我が国においてすべてを解決するような画期的な発明は中々でないのが現状です。
「地域を支えるのは小規模な家族単位の農家」というのは全くその通りであると思うが、農家の事業継承・世代継承は、中小企業の事業継承問題よりもさらに複雑で難しい。
今うまく回転している農家においても10年後は不安だらけ。自然災害は言うに及ばず、一人欠けたら、また病気になったら、更に安値になったらと心配は尽きない。

 今回の新型コロナウイルス騒動によって農業の世界にも様々な地殻変動が起きそうであり、議論は左右上下、振れ幅が激しくなっていると感じるこの頃です。
日本においてもいや全世界においても農業・食糧問題への関心は非常に高まっていると感じます。
そのことが将来の農業及び農業者にとって福音であることを願っています。
川西裕康


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