ブログ「社長のつぶやき」

2024.07.03 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

秋冬作本番を迎えて

今年も7月を迎え、いよいよ秋冬作の時期となりました。弊社でも最繁忙期となります。日本の栽培地区を大きく分けると、日本には夏作地区と冬作地区がある。夏作地区とは、夏場に葉菜類を出荷する気候が冷涼な地区、北海道や本州の高原地帯が主産地。冬作地区とは、気候が温暖で主に冬季に葉菜類を出荷する地区、主に関東から沖縄までの太平洋側に多い。

弊社の地盤の東海地区は、正に冬作の主産地です。もちろん春にメロンやスイカ、トウモロコシ等を作る年2回作ですが、農家の収入の7~8割は冬作にかかっている。そういう意味で秋冬作が表作、春夏作が裏作という人もいるくらいです。

繁忙期を迎えますが、今年も夏の猛暑、異常気象が心配です。お客様である農家にとっても大変ですし、会社の営業部隊や苗作りの部署も大変です。無事高品質の商品をお届けできるのか、また熱中症で倒れる人が出ないか、心配が尽きない約3ヶ月となります。すでに6月が猛暑と言われています。この先、夏が3ヶ月ほど続くと考えるとため息が出ます。

そもそも日本農業には、近々の問題としても大きな心配が2つあります。1つは2023年産米の不作によるコメ不足の影響の広がりです。国は、不安が広がらないよう不足の否定に躍起ですが、市場がジリジリ高騰していますし、夏に在庫を確保できない店もあると聞いています。

もう1つは、豚熱(旧豚コレラ)の広がりです。これにアフリカ豚熱が上陸となると、畜産市場は大混乱が予想されます。

原因はすべて異常気象という理由ではないでしょうが、今年の秋、仮に新米が不足し、園芸野菜も不作、国産豚肉が食べられないということになれば、日本中が大騒ぎになるでしょう。

また、コロナ禍と生産資材の値上がり、価格の低迷で、この4年間で離農者は間違いなく増えています。農業の生産基盤が弱体化していることは事実ですが、私の知る限り、真の理由は、国やメディアが報道する危機感とは違うところにあるような気がしています。

我々のできることは、この夏も頑張る農家に寄り添い、役立つ商品や情報をきちんと届けることです。そして暑さに負けない体力の確保ですね。会社にとっても日本農業にとっても勝負の夏が始まりました。

2024.06.04 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

「秋冬作準備」今年の冬は、農家にとって良い年になって欲しい

6月は、秋冬作(夏に種を蒔いて、秋冬期に収穫する作型)の準備の季節です。夏作如何で年間の収益がほぼ決まる大事な作型です。

2020年のコロナ禍からはや4年目、肥料・重油・輸入飼料等の生産資材価格の高騰と市況価格の低迷で、農業現場はかつてない悲惨な状況が続きました。正直、離農を決断した農家も少なくありません。価格の高騰は少し落ち着いてきたようですが(高値のままということですが)、それでも今年も各種生産資材の値上げの話は聞く。売る側もマイナス、買う側もマイナスの負のスパイラル状況です。売れないから製造コストが上がり、売価を上げる。買う側は、売れないから高い資材は買わない、作らない。

先頃、農政の憲法とも言える「食料・農業・農村基本法」の改正案が参議院を通過した。「食料安保」を掲げているが、現場の心配は食料安保を担う前に、生産主体が壊滅してしまうのではないかということです。自給率の危機は、決して農家の老齢化でもなく、遊休農地の増加のせいでもない。ただシンプルに儲からない、食べていけないと感じている人が増えているからだと思う。

しかも、今年の夏は新たな難題が待ち受ける。ひとつは、予想される更なる異常高温から作物をどう守るかということ。もっと深刻なのは、国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」、「緑の食料システム戦略」と現場の農業とが、どう折り合わせるかという大問題だ。

一般に有機農業を実践すれば、生産量は2分の1以下、労力は2倍以上かかると言われる。4倍以上の価格で売れればよいが、現実は1.2倍、あるいは1.5倍位がせいぜいのようである。しかも、上記「食料安保」概念とはかけ離れて、現場の不安は生産過剰による暴落相場の到来である。こうした難題を前にしながらも、弊社は頑張る農家に寄り添っていきたいと思っています。

2024.05.08 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

5月は新年度

弊社では3回の節目がある。1つ目は正にお正月、新しい年の始まり。 2つ目は4月1日、新入社員を迎え、組織も新年度に向けて再編、スタートする日です。そして3つ目が5月1日、会社にとっては新年度です。しかし、5月1日はゴールデンウイークの真っ最中、どうも新しい年度を迎えたという雰囲気にはならない。

日本では3月決算が多い中、どうして4月決算になったのか、私も正確には知らないが、4月は家庭菜園や一般園芸が活発な月、もともと店頭小売が原点だったので、3月は避けたかったのだろうと推察します。そして5月・6月は、例年最も売上が少ない月ですから、決算業務に時間を割ける4月が選ばれたのだろうと思います。

しかし、5月には重要な行事がある。弊社は「経営計画書による経営」を標榜しています。昨年、某大手中古車販売会社の不祥事があり、この経営計画書は社員の手足を縛る道具ではないかと叩かれたが、私から見れば使い方・考え方によっては凶器になりうるという教訓を頂いた。

私は、経営計画書を会社の理念を共有し、お客様への姿勢や行動基準のベクトル合わせの道具だと考えています。人にはそれぞれ個性があり、得手不得手がある。社交的な人もいるし、対人関係が苦手な人もいる。苦手を克服するよりも、自分が楽しい、好きだ、やりがいがある、正しいと思うことをその人なりのやり方で表現してくれれば良い。真摯な思いがあれば、必ずお客様はわかってくれる。

ただ理念や思想がバラバラでは困る。だから会社が向かおうとする方向性、ベクトル合わせは重要だ。迷った時には、経営計画書を読んでもらえば、考え方は書いてある。方向性が定まれば、やり方は一人ひとりバラバラでも良い。

5月には全社員に新しい経営計画書を配布し、全社員参加の「経営計画発表会」を実施する。やはり5月は大事な月、本来は会社にとっては「お正月」のようなものなのです。

2024.04.02 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

入社式、そして農業関連企業の2大問題

4月1日 弊社も新卒社員を9名迎えることができました。会社の決算は4月末ですが、4月は新組織となり、今日は入社式です。実質的な新年度入り、会社のお正月のようなものです。ここ数年と唯一違いがあるのは、桜がまだ2分咲きだということ。生活が変わる新人にとっては、入社後に満開を迎える桜を楽しめるのは、緊張を解す上でもありがたいでしょう。一生忘れない桜になるかもしれません。

新卒・新人を迎えるには、会社を発展させる決意が必要です。新入社員には難解だったかもしれませんが、私は敢えて未来の会社にとっての2つの大きな課題を述べました。

1. 日本の基幹的農業従事者数は、2022年の推計で116万人、民間予測では2040年には30万人を切るのではないかと言われています。実に70%減です。国内農業マーケットの縮小は間違いありません。そうした縮小マーケットの中で、どうやって会社を発展・拡大させる事ができるのか? 私の古い頭では、今後も「頑張る農家を応援・選ばれる会社になる」しかないとのアナログ回答しかありません。ブレイクスルーには若い社員の知恵が必須です。

2. 昨年度から日本はインフレ社会となり、メディアでは大企業を中心に給与の大幅アップ、「満額回答で妥結」と盛んに報道されています。今後は給与アップの波が、中小企業に及ぶかどうかが鍵と言われています。更に、その際の処方箋は「適正な価格転嫁」を行う事と解説しています。しかし、我々のお客様である多くの専業農家は、自らの力では「適正な価格転嫁」を行うことはできません。価格は市場で決まるからです。むしろ大手資本による食料品が値上がりしている分、「生鮮食料品」は値下げしたいと言うのが大手スーパーの本音だろうと思います。価格転嫁の自由がないお客様への販売が主な仕事である弊社はどうすればよいのか? 社員の待遇改善・給与アップは緊迫の課題です。一口に言えば労働生産性を上げるしかないというのが私の結論ですが、処方箋は見つかりません。やはり若い社員によるブレイクスルーが必須です。

以上が私の大きな課題認識です。逃げているように思われても仕方ありませんが、若い世代に突破口を開いてもらいたいというのも本心です。入社式ですから許してください。

そして、そうした厳しい現実に敢えて飛び込んでくれた新人社員には本当に感謝です。「やりがいもあり」、「働くことが楽しくて仕方がない」と言ってもらえるような会社を目指したいと、心の底から思っています。

2024.03.04 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

農業問題のパラドックス(逆説)

政府は「農政の憲法」とされる食料・農業・農村基本法改正案を国会に提出した。2024年度予算成立後審議に入るようですが、国民の関心(メディアの関心というべきか?)は薄い。また、関心のある人にとっても、立場によって見方が180度異なる。それを私は「農業問題のパラドックス(逆説)」と呼びたい。

(1)「食料安全保障の確保」が、基本法の中心理念であることは間違いない。自国農業衰退による食料危機を、多くの国民は心配している。食料自給率38%、将来は更に低下するのではないかと危惧している。しかし、農業現場での心配は「生産過剰」の問題です。お米も野菜も常に生産過剰による暴落を心配している。更に言えば、農業生産資材高騰にも関わらず、生鮮食料品の価格は上がらないことに対して、一定の所得補償政策を打ち出すべきか、生産過剰が収まるまで放置すべきか議論が分かれている。率直な意見を言えば、生産不足気味のほうが生産者はありがたい。

(2)「環境との調和」との温度差。国は農林水産業の環境負荷を減らすための7項目「①肥料の適正使用 ②農薬の適正使用 ③電気・燃料などエネルギーの削減 ④悪臭や害虫の発生防止 ⑤廃棄物の発生抑制と循環利用・適正な処分 ⑥病害虫防除など生物多様性への悪影響防止 ⑦環境関連法令の順守」を掲げ、これをクリアしないと補助金対象から外す政策の実現を目指している。多くの国民は安心・安全な食糧生産を期待し、有機農業の推進や化学農薬・肥料の削減ができれば、環境にも優しく、生産コストも下がり、良い事ばかりと考えている。

しかし、現場では大雑把に有機農業を実現するには、生産量半減、労力は2倍と思っている。掛け算で今の4倍位の価格で売れないと経済的に合わないが、現実はせいぜい1.2倍位しかならない。環境問題の取り組みにしても、そもそも国土の保全、環境と文化の守り手は農村ではないかという自負がある。双方の認識には大きなギャップがある。現在、EUで多発している農民デモも、根底には「農業は環境の破壊者」と定義づけるような環境政策に、農民が我慢できなくなったということが大きいのではないだろうか。環境の保護者と自負していた農民が、犯罪者のように扱われたら我慢出来ないだろう。牛のゲップがCO₂増加の主要な原因と言われてもなかなか打つ手はない。また、循環利用型農業は農家も望むところであるが、そのためには使用資材削減効果の何倍もの設備投資が必要となる。

私が具体的な提言を出せるわけではないが、一番心配しているのは基本法改定が成立しても、農業の担い手がいなくなるのではないかということ。現場と理念の間には、大きな乖離があることを、できるだけ多くの人々に知っていただきたい。そしてメディアも、もう少し深掘りしていただき、かつもっと積極報道してもらいたい。

2024.02.05 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

EU 農民デモに注目

1月末、ニュースでEU圏内のフランスで始まった農民デモが、欧州全体に広がりつつあるというニュースを見た。個人的には「やれやれ」という気持ちですが、高速道路を封鎖して、パリを包囲という動きに、正直派手だなと感じた。高速道路封鎖という行動に市民はどう思うのか? 日本だったらおそらく農家の傲慢と避難されるだろうが、EUでは市民にも農民行動への一定の理解があるのでしょうか、それとも実力行使はフランスの伝統だろうか?日本においても現在の農業環境は最悪ですが、風土なのか、国民性なのか、「高速道路をトラクターで封鎖」という行動は多分思いつかないし、多くの国民の共感も得られない。くどいですが、日本農業も最大のピンチですが農業現場目線のメディア報道は少ないような気がします。農業は、生産性が低く補助金で成り立っているのに、自分勝手なわがままな行動だと思う国民が半数以上だろうと想像します。  

JAcomのネット配信、イタリア農民デモの記事の中で「農業はその収入の半分以上を国の援助に頼っているが、それは我々が市民のためにコスト以下で製品を売っているからで、国はその差額を払っているだけだ。・・(一部省略)・・。現在のEUの政策は、第一次産業を破壊しようとしているとしか思えない。失業者が増えるだろう」と、イタリア農民委員会のリーダーの一人の発言を取り上げている。これは、日本の特に穀物農業(主に米作)も近いと感じる日本の識者はどのくらいいるだろう?

 EUは、「有機農業」に対する基準も、環境政策の目標値も日本より高い。マニアックな知識だが、有機農産物を名乗るには使用する種苗においても、その生産が有機農法による収穫物でなければならないと聞き、正直すごいなと思っていた。しかも、支援するウクライナからは大量の廉価な穀物が入ってくる。その中で農業を頑張っているEU農民は立派と思っていたが、デモの理由を聞けば日本と状況は近いと、変な感想かもしれないが少し安心した。自分なりに解説すれば、農産物価格はあまり値上がりしないのに、使用する「農業資材価格」(石油類・肥料・飼料含む)は高騰、ただでさえ苦しいのに追い打ちをかけるように、厳しい環境基準を突きつけられ、補助金はカットされる、もう我慢できないという理屈だと思う。   

EUを先進事例とする日本の政策もEUに近づいているが、現場は「空想論・理想論」と感じている農業者も多い。日本の農業団体は高速道路を封鎖するような実力行動はしないと思うが、怒りの気持ちはEU農民に近いということを少しでも理解していただければ、ありがたいと思います。

2024.01.15 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

農業こそ多様性が大事ではないか?

2024年は農業関係も上向くと、大した根拠もなく新年を迎えましたが、いきなり1日には能登半島大地震、翌2日には日航機と海上保安庁小型機が滑走路で激突する等、ショッキングな幕開けとなりました。日航機の乗客・乗員が全員脱出できたのは唯一の吉報ですが、能登支援に向かう海上保安庁小型機の乗員の命と、能登半島で数百人の命が絶たれたことは只々無念です。心中よりお悔やみ申し上げます。

さて本年2024年は、農業基本法が25年ぶりに改定予定です。根底にある思想は「食料安保」と「地球環境問題」への対処にあるようだが、これは根底から疑問がある。「健全でイキイキした農業者」が確保・維持できなければ、上記概念は机上の空論となる。まずは日本農業とそれを担う農家の経済的・精神的地位向上が優先事項だ。西暦2000年頃から弊社においても、園芸先進国オランダに学び、規模拡大と生産性向上に役立つ商品の開発普及に力を注いできた。それが将来の日本農業を救う道だと信じていた。しかし、国は2022年「緑の食料システム戦略」を打ち出した。地球環境への対処と、肥料・飼料等を海外に頼る脆弱な生産基盤に対応するためだろうが現場は混乱した。生産性拡大一辺倒の立場から言えば、相反する事ばかりだからだ。その間を「スマート農業」の推進という言葉で繋げたが、イメージの独り歩きのようで現場は更に迷っている。第一に設備投資しようにも農産物価格は上がらない。農家所得は下がるばかりで設備投資どころではないのが現状だからです。

私は、もう一度農業にも「多様性」概念を大事にできないかと思っている。規模拡大と労働生産性向上を目指す農家・農業法人が今後も中核とは思うが、定年帰農者や新規農業参入者、夢やロマン、または健康への懸念から有機農業を志す人、高齢者や障害を持った方々も生き生きと参加できる農業、また家畜の命のあり方を懸念する人々が始める農業、そんな多様な農業へのアプローチ、そして現場で頑張っている人がいてこそ、日本農業の強さになるのではないかと思う。そして、多様性のある農業とそれを支える農業者に寄り添える会社でありたいと願っています。

2023.12.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

今年もはや師走

早いもので今年もはや師走、猛暑の夏から一気に冬に突入したような季節感覚ですね。農産物は、残暑と急激な冷え込みで、9・10・11月の市況は乱高下しました。

このような状況の中、農家サイドから見て面白くないのは、価格が暴騰した時だけ「野菜が高い」とニュースが取り上げることです。価格が高くなるのは、予期せぬ残暑の継続で収穫量が落ちているのであって、大半の農家は儲かっているわけではない。むしろ思うように収穫できない辛さは、金額の大小に関わらず農家にとっては大打撃です。安くなった時は「お買い得情報」が流れるが、農家が安値で途方にくれているとの話題は殆ど出ない。同様に食料安全保障の必要性や自給率低下が、国の大問題として取り上げられるが、肝心のそれを担う農業者の苦しい経営実態を論じる評論は少ない。 

2020年は、予期せぬ「新型コロナウイルス」によるパンデミックスで始まり、ほぼ4年間、生活スタイルの変更を余儀なくされた。また、2022年にはロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻した。この21世紀にこんな露骨な軍事攻撃があるのかと目を疑った。それ以来「話し合いで解決しよう」という思想は、机上の空論、平和ボケと言われた。この年になって自分の考えや生活スタイルの大幅な変更を迫られるような「現実」が次々に発生したのは、まさに「想定外」の出来事でした。 

一方、「人新世」という皮肉を込めた?人類の時代という意味での地質学上の言葉も脚光を浴びた。農業という産業も競争原理に基づいた「経済活動」であることを忘れないでほしいが、農業というと急にロマンチックな議論をする人も多いように感じられる。将来の農業はどうあるべきかについて、改めて具体的に模索する時が来たようです。少なくとも大規模化による競争原理と弱肉強食による淘汰が、将来の農業を強くするという理屈はすでに破綻していると思う。2024年以降の農業についてもしっかりと見て行きたい。

 2024年は、農業を担う人々にとって良い年になることを願う。また、農業を担う人々にとって少しでも役立つ会社でありたいと願っています。

2023.11.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

11月からは暖地の収穫の本格的始まり、しかし不安がいっぱい

今年もはや11月、暑かった9月が過ぎ10月に入ると急激に秋らしくなってきました。11月から来春までは、いよいよ温暖産地の出番です。弊社も下半期入りです。最大の焦点は、資源高、青果安に苦しんだ過去2年間の状況から脱却できるかどうかです。一番望ましいシナリオは、農家にとっては豊作でありながら、青果価格が上昇することです。

10月は、トマトが異常に高いとテレビや新聞で何度も報道されたが、決して生産農家が儲かっていたわけではないだろう。採れてないだけです。出荷量✕平均価格で言えば、おそらく農家も苦しんでいるだろうと思われる。一番大事なことは、2年に及ぶ資源高(生産費の上昇)に見合う価格形成が、農家が納得できる出来栄えの上で、再生産意欲を掻き立てられるほどの水準で行われるかどうかである。

私は怖い夢を見ることがある。今年は渥美半島を巡回してもいつものようにキャベツの作付けは実施されている。今年こそはと農家は期待しているのだ。その努力には思わず涙腺が緩む。もし今冬の青果価格が暴落したら、来年度は何も作付けされない畑が広がるのではないかとの悪夢を見る。

食料・農業・農村政策基本法の改定が議論されている。世界各地で地域紛争が激化する中、最上位概念は「食料安全保障」の問題となっている。しかし、これは順序が逆ではないかと私は感じる。現に農業で頑張っている農家の皆さんに明るい未来を提示できなければ、誰が「食料安全保障」を担保するのだろうか。
かつて「沈黙の春」という名書があった。来年以降「沈黙の畑」「沈黙の田んぼ」が増えるのではないかと懸念している。これは遊休農地とは違う。作付けしても採算が取れないからやむなく休耕するということだ。農業にも新たな担い手はいるが、正直減りつつある。食料安保議論は、「国防」や将来予想される「飢餓からの回避」を優先論議するほど、現場の実態が放置されるように感じるのは私だけだろうか。

2023.10.04 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

農家が8割減る日?

日経新聞2023年9月18日日曜版によると、国内の農家数は農業法人も含め23年2月で92万9千戸。このままでは離農が急速に進み、三菱総合研究所は2050年に17万7千戸になると推計する。現在に比べて実に81%も減る計算となる。これが本当だとすれば、我々のビジネスマーケットは相当縮小することになる。但し、耕地面積の減少率には触れていないので、その多くは一部の既存農家が規模拡大を図ることは考えられる。或いは新規参入法人が遊休農地を活かすことは可能かもしれない。これはAI等を利用した『スマート農業』が推奨されている理由でもある。

一方、農林水産省は昨年『みどりの食料システム法』を制定した。環境に優しく2050年カーボンゼロを目指す取り組みではあるが、現場サイドから見ればより農業に労働集約を求める内容となっている。安心・安全な無農薬有機農業は確かに望ましいかもしれないが、慣行農法に比べれば相当人手がかかる(よっぽど高く売れない限り労働生産性は低くなる)上に、単位あたりの生産量は低くなる。
そうした状況下において、農家・農業を相手にビジネスをする当社の将来戦略はどうあるべきなのか、正直なところ道が見えてこない。少なくとも言えるのは、減少を続ける専業農家により支持される会社を目指すことだけである。
農業に関わりのない一般の消費者は、農業にはなぜか現実を超えたロマンを求めているように思うことがある。農業も立派な産業であり、資本主義・自由主義の論理の上に成り立っていることを理解してもらいたい。

一方、私にもロマンがある。農業こそ「多様性」の概念が大切だと思う。農業には従来からの家族型農業があり、また規模拡大を目指す農家の方もいる。この他にも定年帰農型の小農家、直売所での販売に生き甲斐を感じる農家、或いは無農薬・有機農業を志す農家、自給自足型ライフスタイルを志向する人、地球温暖化やアニマルウェルフェアに関心が深く、何よりもそのことを優先しようとする農家の方などもいる。このような其々多様な農家が絡み合って、種まきから収穫までのストーリーと価値観を理解する消費者が増え、作る側も消費する側も幸せを感じる世界(それぞれが成り立つような価格形成)が描ければ、日本の農業はむしろ強くなる、私はそう願っています。