2017.06.23 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
夏が近づくと、学生時代、よく山登りをしたことを思い出す。
尾根伝いに山々を縦走する登山も好きだったが、思い出すのは沢登りです。
尾根歩きは、景色はよいが、暑い上に少々退屈。
それに比べて沢登は川のせせらぎが心地よく、変化に富んで飽きない。
最大の醍醐味は登攀(とうはん)です。
しかし登攀は、滑落すれば命の危険もある。
また大怪我をしてもそう簡単には病院にたどり着けない。
そこで大事なのが「3点確保」の原則です。
自分が今から命の危険を伴う行為をするということを体全体でしっかり理解することである。
今自分が滑落したら、周りの仲間にどれだけ迷惑をかけるのか、そして沢登に行くことすら知らない家族、両親がどれほど驚き、悲しむか、そのことをしっかり頭にイメージした上で行動を始めることです。
その上で、両足、両手の1点だけを前に動かし、新しい確保点の安全が確かめられたら、次の1手を動かす。特に危なそうな部位に来たときは、もう一度自分が死んだらどうなるかというイメージを徹底的に叩き込む。
その繰り返しを決して省略せず、一歩一歩前に進むのが大事だと思いました。
この考え方は会社の経営にも、とても役に立っている。
しかし、時には3点確保すらできない難所も現れる。
2点確保は3点確保に比べると10倍以上は危険、滑落の危機に直面する。
それでも2点確保に臨まなければならない時はある。
その際はより一層自分の意識を掘り下げて、滑落した際のイメージをより強く体に叩き込んだ上で、最善の注意を図り、足と手を同時に動かして、前に進む。
3点確保のみではたどり着けないであろう高みにたどりつくことができると信じて。
川西 裕康
【登攀】とうはん の意味
出典:デジタル大辞泉[名](スル)登山で、険しい岩壁などをよじ登ること。
2017.05.27 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
本年3月に日本政策金融公庫から発表された「施設園芸(トマト)の規模と収益性に関する調査」において、施設トマト栽培においての収益性は施設面積6,000㎡以上8,000㎡未満が最大になると報告された。それより規模が大きくなると収入は上がるものの、収益性は低下する。これは私が長年現場で感じていたイメージに近いように思う。いま日本はオランダに学んで大規模経営農業を志向している。オランダの四季は春から秋にかけても比較的穏やか、安定した収穫が期待できるので雇用労力を固定しやすい。一方日本は春から夏にかけて一気に温度が上がり、日射量も多く、収穫量も激増する。この時期に合わせて労働力を確保すると、年間ではどうしても過剰雇用となる。実のなったトマトはとにかく収穫しないと樹がばててしまうので、収穫作業は必須である。と言って省力化・無人化機械への設備投資は、一般論として割高で償却が大きな負担となる。6,000㎡から8,000㎡の経営体の多くは、家族経営+季節に応じたパート労力の投入でこの問題を対処している。忙しい時は寝る暇を惜しんで働く。しかも雇用労力が親戚や近所の知り合いの場合、働く側が農家の繁忙期を知っており、適切な時期のみ応援に来てくれるケースも多いと聞く。しかもこの規模なら熟達した農業経営者は全体状態の把握が可能であり、適切な管理によって高収穫と高品質を目指すことができる。
日本の施設園芸の将来に向けての考え方、方向性を考えるうえでとても参考になるレポートだと思いました。しいて言えば若手専業農家のもう一つの悩みは、決められた休日を確保したい(あるいは家族との休日を取りたい)ということもあると思う。これを解決するためには、自分の片腕となる常用雇用労働者を一人以上確保することが肝要になる。2~3日農園を離れても任せることのできる社員の存在です。当然そうした社員にはそれなりの給与で報いる必要がる。そうした雇用労力を投入しながら、経営と生活を安定させるには、8,000㎡~1h規模ぐらいが今後の日本における施設園芸農家の好ましい在り方ではないかなと私は感じます。超大規模な法人経営体が闊歩するのではなく、地域に根差し、地域を熟知した「家族経営」型農業が10年後も日本の中心であってほしいと思います。
2017.05.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
弊社の決算は、4月末です。毎年5月に入ると会社スタッフ全員を集めて経営計画発表会を実施しています。(株)武蔵野の小山社長に20年近く前に指導を受け、第36期から今回の51期まで「経営計画書」の作成配布と「経営計画発表会」を本社のある豊橋駅前のホテルで行うことが慣例となっています。
しかも近年は5月2日と決まっています。よっぽど日柄がよくない限り、ゴールデンウイーク間のこの日は大きなイベントはないようなのです。
発表会後は、新入社員歓迎パーティーと続きます。
結構盛り上がります。
(毎年恒例の昨年入社先輩社員から花束贈呈)
私にとっても、最も気持ちを新たにする日であり、社員の皆さんが楽しそうにパーティーに参加しているのも見るのは、何よりもの喜びです。弊社ではこのような全体会議と懇親会というパターンは年3回行っています。この経営計画発表会、そして7月の上期勉強会(泊まり)と12月の下期勉強会(泊まり)です。年に3回はすごいねと言われることもありますが、もともと上期勉強会はかつて実施していた慰安旅行を変形させたものであり、12月の下期勉強会は、もともとあった全員参加の大忘年会に勉強会を加えただけなのです。今後も続けられるかどうかは未知数ですが、全員が集まる機会が3回あるということは、普段は会う機会がない社員同士が会えるという意味でも、また団結力という意味でも、費用対効果は十分見合っていると私は思っています。早く懇親会にならないかなと思っている社員が大半だとは思いますが、その前に社長の話を聞いてもらう機会があるのは、私の精神状態のためにも大変ありがたいことです。また近年は決して会社が強要したわけではないのですが、新入社員は宴席で集団パフォーマンスを行うのが慣例になっており、これもひそかな楽しみの一つです。
(新入社員たちによる集団パフォーマンス披露、盛り上がっていますね!)
2017.04.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
本年16名の新卒新入社員を迎えることができ、私自身も新たな勇気と希望を頂き、また大きな責任を感じています。
当社にとって新卒採用は最も大切な仕組みであり、文化です。
多くの地方企業にとっては、業容拡大と将来の明るいビジョンを描けない限り、新卒採用は厳しいというのが現実です。私にとっての新卒採用は、会社がsustainable(サステイナブル:持続可能)であるための大変重要な条件だと思っています。新卒採用の継続は会社構成員の年齢バランスを適正に保つ効果があり、会社のベクトル合わせに有効で、団結力を強めます。しかも昨年の新人は先輩という地位を手に入れることができるし、新人を肴に歓送迎会を楽しむ機会を増やすことができます。
一方新卒採用のみを偏重すると金太郎飴のような組織風土となりがちで、「会社の常識は社会の非常識」のような事態を招くのではないかと危惧する声もあります。diversity(ダイバーシティ:多様性)という言葉も私がとても好きな言葉です。好きではありますが、実践、実行できているとは言い難い現実があります。
強固な組織だが、単線的ではなく、一人一人の構成員は多様性を享受し、何よりも尊重している。
どこかの大都市の知事さんのような英語の使い方で恐縮ですが、diversityの尊重がsustainableにつながると信じて行動できている。
そんな組織を目指していきたいと願っています。
2017.03.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
かつて私は日本の施設園芸におけるトマト栽培は、少なくとも単位面積当たりの収穫量は世界一だろうと勝手に思っていた(1990年代)。日本人は勤勉で精密、何よりも栽培面積が小さいのだから、大面積を大雑把(当時は勝手にそう思いこんでいた)に管理する欧米よりも収量性は良いに決まっていると思っていたのです。ところがある雑誌でオランダの大規模トマト栽培が紹介され、数字を見ると日本の3倍以上の単位当たり収量があると聞きました。私は半信半疑でしたが、1997年初めてオランダを訪問すると、それが事実であることに衝撃を受けました。オランダでは、国立の専門大学を中心として非常に論理的、合理的に栽培技術の向上が図られていたのです。この事実は会社として共有する必要があると感じましたので、その後5人前後の社員を連れて10年以上オランダ施設園芸視察を継続しました。
2010年前後、日本においても施設の環境を統合的に制御することによって収量を飛躍的に向上させることの重要性が頻繁に論議されるようになりました。弊社においてもオランダ視察の経験から、そのことを理解する社員が多数いたことが大きな財産でした。そこへ(株)デンソーさんが、新事業開発の一つとして「農業支援」という理念を掲げられ、幸運にも当社の扉をたたいてくれました。そして双方の努力のもと、プロファームと言う商品コンセプトが生まれたのです。振り返ればオランダ視察にのべ50人前後の社員を派遣したことは企業としては大きなコストでしたが、今振り返っても無駄ではなかったと思っています。それどころが弊社のミッションにとって「核心」部分を形成するようになってきたと自負しています。
2017.02.07 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
この場をお借りしてで申し訳ないです。
父川西十三雄の永眠に際しては、多くの皆様に丁重なるご芳志を賜り、厚く御礼申し上げます。
父の死をもって、弊社創業4名は天国の人となりました。
名実ともに新生トヨタネとして歩まなければなりません。
そんな折、父の資料を集める中で、昭和55年当時の第一勧業銀行(現みずほ銀行)広報誌「千客万来」に寄稿した文章が目に留まりました。
親子とはいえ、父と仕事についてのコミュニケーションが多かったとは言えません。
しかしこの文章を読んで父の考え方を私は受け継いでいるということを確信でき、大変うれしく感じました。
再録させていただきます。
以下川西十三雄 記事全文掲載 「一粒の種が実るまで」
出展:昭和55年6月第一勧業銀行(現みずほ銀行)広報誌「千客万来」より
2017.01.01 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
皆様明けましておめでとうございます。
2017年は酉年、酉年生まれの私にとっては、5回目の干支、つまり還暦です。
意識の上では、多くの社員と同世代のつもりですが、社員側からは違った姿に映るのでしょう。
自分自身の幼い内面と、還暦を迎える社長という現実を前にして、社員との距離感のミスマッチに気づいていないのは、当の社長らしいです。
思えば情報革命の真っただ中を過ごしてきた。
大学生の頃、間借りしていた下宿屋の取次電話で4年間を過ごしたが、不便は感じなかった。
親は音信のない息子を心配しただろう。
会社に入るとすぐFAXが登場した。
FAXが普及すると情報の「蕎麦屋の出前」ができなくなった。
1980年代になるとポケットベルの普及、すぐ連絡が取れる社会となった。
1990年代は携帯TELが普及、同時にインターネット全盛時代となった。2000年以降はSNS、IoT、AI等。
そして近い将来SinguLarity(人工知能が人類を超える日)が人類を根本的に変えるといわれている。
IT革命はこれからも加速度をつけて進行するのでしょう。
会社も時代に合わせて変化しなければお客様に捨てられます。
どんどん変えていくべきことと、変えてはいけないことをよりスピードを重視して、一つ一つ丁寧に決定する心構えを大切にして取り組んで参りたいと思います。
会社一同、皆さんの力でもっともっとお客様に役立つ会社を目指しましょう。
川西 裕康
2016.12.29 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
皆さんこんにちは
来年は酉年ですね。
私も実は酉年、5回目の干支、回りくどいですが要は還暦、60歳になるということです。
酉年だからではないと思いますが、鳥は大好物です。焼き鳥も好きですが、添付写真(豊橋駅前のトリ専門店で頼んだスパイシーなローストチキン)のような丸焼きも大好きです。
友人に鳥はダメと言う人がいます。
よくよく聞くと、昭和の時代の農村では、生きた鶏を買い、お祝い時に首をはね、羽を毟った後、丸焼きにしたそうです。
今の日本では見かけませんが、東南アジアに行くと市場で生きた鶏を売っている光景を見ることがあります。
日本でも昭和40年代くらいまでの農村では普通だったようです。
その友人は、その光景がトラウマとなっているのです。
皆さんタッカルビを知っていますか?
韓国の辛いトリの焼肉です。
これがまた最高にお酒と合う。
しかしその韓国が、鳥インフルエンザの蔓延で大変なことになっています。
本日の新聞では2600万羽を殺処分とのこと。
韓国の人口は約5000万ですから、一人当たりローストチキン半分を食べるチャンスを失いました。
冗談のように言いましたが、大変な事態です。
食べ物の恨みは恐ろしいので、鳥インフルエンザが流行るのも朴政権のせいだということになれば、更に騒ぎが大きくなりそうです。
日本も対岸の火事で収まるかどうか微妙だと思っています。
酉年1月のニュースが鳥インフルエンザの話題にならないことを祈るばかりです。
特に豊橋は日本一のウズラの産地です。
豊橋人はざるそばに生のウズラ卵を添えるのが常識ですが、世間では非常識のようです。
うずら串も焼き鳥屋で私の定番の一つ、中華飯を食べるときは、大好きなうずらは最後までとっておきます。
うずら焼きは皮ごと食べるのが豊橋では常識です?。
以上いろいろ言いましたが、来年は酉年、皆さん良い年を迎えてください。
川西裕康
※上記は2017年度に入社される内定者の方々とのメール内容を使っております。
ご了承ください。
2016.12.16 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
先日 日本オランダ官民交流セミナー参加、その席で施設園芸協会の篠原会長が、個人的意見と断ったうえで、日本の施設園芸は栽培面積1ヘクタール、1億円販売農家1万件が望ましいと発言されました。
私もおおむね同意します。
弊社は、アフターフォローや栽培指導等のソフト面に強みを発揮して、こうした顧客の支持を得たいと願っています。もともとタネヤですから、種まきから収穫までフォローすることが会社のアイデンティティとなっています。
しかし規模拡大を目指す農家が必要な技術・情報は栽培ノウハウだけではありません。
合理的な生産管理ノウハウや金融知識、雇用労力活用がより重要になってきます。
残念ながら弊社は自ら大規模経営の経験がなく、生産管理手法について顧客に伝えることのできる情報が少ないと感じています。会社にとって大きな課題です。特に日本は、オランダと比べるも四季の変化が激しく、それに伴って季節毎の作業内容も量も大きく異なります。例を挙げるならば、年1作型のトマト栽培において真冬に必要な収穫労力と4~5月の収穫労力は大きく異なります。
しかし4月に合わせて常用雇用を増やせば、おそらく経費倒れになるでしょう。
大規模な法人経営が安定しない原因の一つはここにあります。
家族経営は、労働時間を季節毎に大きく変動させても経費増にならないところがミソです。
しかし家族だけでは規模の拡大は限られるので、季節によって柔軟に労働時間を変動できる良質な雇用労力を持つ農家が強みを発揮するということになります。
最後に蛇足ですが、今弊社が取り組んでいる施設内高所作業車等のシステムはこうした農家のニーズに対して理にかなった商材としてこれから是非普及させたい商品です。
2016.11.15 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
皆さんこんにちは。
先日ある人から「ゲノム編集」についての意見を求められましたが、何も知識を持っていませんでした。先方は種苗会社の社長だから当然詳しいだろうと思ったようです。恥ずかしい思いをしました。
そこで素人なりに、少し勉強しました。
ゲノム編集とは、特別なDNA切断酵素を使って、膨大な遺伝情報の中から特定の遺伝子部分に狙いを定めて切断。遺伝子を破壊したり、新しい遺伝子を組み込む「編集」を行い、狙った通りの遺伝子を思い通りに書き換える技術だそうです。
これだけ聞くとさぞかし難易度の高い技術のようですが、クリスパー・キャス9という切断酵素の発見で、非常に現実的、身近な技術になっているとのことです。
ゲノム編集によって多くの動植物の品種改良が従来の交雑や突然変異を待つ手法よりはるかに早く、狙った成果が得られる可能性が高くなりました。もちろん医療分野、ガン治療や遺伝性疾患にも素晴らしい効果が期待されています。この分野の研究は米国そして中国がかなり進んでいるようです。
そこで最初の質問に戻るわけですが、ゲノム編集は遺伝子組み換え技術とどう違うのか、そしてその上で遺伝子組み換え作物には拒絶反応の強い日本においてゲノム編集作物は受け入れられるのかどうかというのが質問のポイントでした。
社会の受け入れが難しいとの理由で研究が遅滞するようだと、実用化技術において日本は大きく取り残されてしまう可能性が高い。すでに遺伝子組み換え技術は米国の独り勝ち状態です。
ゲノム編集技術は、AIにも勝る21世紀技術革新の中心テーマになる可能性が高いと言われています。野菜や花卉の育種分野はマーケットが小さいので、遺伝子組み換えは倫理的にも経済的にも採算が合わないと言われていますが、ゲノム編集技術ははるかに抵コストで品種開発につながる可能性があります。世界の趨勢と倫理上の問題の間でこれからの大きな社会テーマになりそうです。
一種苗人としてこのテーマを注目する必要があると感じています。