2019.03.22 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
3月は喧騒の時、期末が近づき、売上固めをしながら、次年度計画作成に余念がない。何事も最終的な決定責任は社長にある。めくら判押せば良いのではないかと言う人もあるが、それでも決定するためには、内容をよく自分なりに咀嚼する必要がある。だからやたら忙しくなる。そんな折、クイーンのフレディ・マーキュリーにスポットを当てた映画「ボヘミアン・ラプソディー」を観に行きました。私にとってはビートルズのジョンレノンが絶対的存在でしたが、今はフレディに浮気しています。1970~80年代は私にとっても青春時代、当時クイーンといえば下品で、猥雑、やかましい怪しげなバンドという固定認識で振り向くこともありませんでした。
今となっては自分の器量の狭さ、受容力の低さが身にしみます。時代も私も変わった。LGBTへの理解、そして多様性理解が時とともに変化していることを感じます。クイーンに最初に熱狂したのは日本女子のようなので、その感性力恐るべし、やはり日本女性は許容力が広いと確信しました。
春は、梅、そして河津桜が咲き、今白木蓮が咲き始めました(3月14日)。
間もなくソメイヨシノも例年より早く咲きそうです。会社は2020年リクルートと4月からの新入社員受け入れに大忙しです。更に「働き方改革」に添えるよう労働条件を再整備することも待ったなしです。弊社はお客様の利便性を考慮し、土曜日営業も続けています。年間休日日数、年間労働時間、そして連続5日の有給取得出来る環境作り等、調整が一苦労。それでも学生に振り向いてもらうために、それに答えながら、生産性を高める努力と工夫をしていかないと取り残されてしまいます。花も咲き急いでいるように感じる今年の春、会社も新年度の準備に大慌てです。
川西裕康
2019.02.14 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
今年は暖冬、好天続きで冬野菜の値段が相対的に安い。弊社にとっての重要品目である施設トマトも安値が続いている。近年の活発な設備投資による暴落懸念も一部ささやかれており、真相はよくわからない。いずれにしてもこの2~3年に大きな設備投資をした農家にとっては、正念場となっている。弊社としては生産性アップと省力化技術の推進による単位経費のコストダウンでお役にたてるよう努力を重ねるしかない。国の方向としては、農業基盤の弱体化による栽培面積減少を少数精鋭の大規模農家あるいは法人による高効率大規模園芸を推進する方向で進んできたことは間違いない。
4ha規模の次世代施設園芸モデル事業を経て、現在は1ha規模の施設園芸モデルを模索している。この方向性は、将来の日本農業にとって唯一「持続可能」な方針なのかどうかという疑問も一方で増えてきたように思う。今年5月から国連の「家族農業の10年」が始まります。
日本はその共同提案国になっている。現在においても先進国における農業経営体に占める家族農業の割合は概ね95%あります。家族経営にも弱点や克服が困難な点が多いことはお客様からよく聞いていますが、少なくとも経済的な逆境には一番強いだろうと感じます。また私の周辺でも、定年帰農を実現させて、生き生きと暮らしている方も多く見える。そういう人は大規模経営を望んでいないが、高品質な生産物を作ろうと熱心な方が多い。またもっと若い層においても「半農半X」というライフスタイル、生き方がじわじわと支持を拡大しているようにも感じます。日本農業の将来を鑑みるとき、やはりその「多様性」を大切にすることが肝要だと最近強く感じます。大規模かつ企業的農業を指向する方向も大事にしながら、多様な農業で将来の日本農業を下支えすることもとても大事だと思います。それは生き方そのものでもあり、21世紀の新たな思想や哲学を形成する流れにもなっていくのではないかと想像します。「多様性」に対する理解があるか、「持続可能性」の観点からどうなのか、この2点がキーワードだと思っています。
川西裕康
2019.01.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
2019年が始まりました。昨年は弊社50周年行事もあり、皆様には大変お世話になりました。本年も昨年同様何卒宜しくお願い申し上げます。
昨年末には、大仙(株)と(株)デンソーと3社で出資したトリシードアグリ(株)を立ち上げました。今後は「T-cube」ハウス及びプロファーム関連商品の拡販に尽力して参ります。また同様に10月に完成した磐田ナーセリーも今年に入って本格的な稼働が始まりました。スタッフ一同、良苗の生産により一層努力します。
さて皆さん今年のお正月はいかがお過ごしでしょうか。今年はたっぷり時間がありました。近年は老眼も進み、かつてのような読書欲もなくなり、夜はちょっぴりお酒を飲んで早く寝たいというのが私の偽らざる心境です。最後に読んだヘビーな本と言えば、確か3年前の正月、トマ・ピケティの「21世紀の資本論」、途中で断念したいと何度も思いながら、意地になって読み切ったのを覚えています。ところが今年、新進気鋭のイスラエル人歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史上下2巻」が世界中で1000万部以上売れているという話を聞き、自分もこのまま老けて読書欲を失いたくないというささやかな葛藤の間で、気合を入れて読んでみました。訳者の表現力もあるのでしょうが、村上 春樹さんの本をかつて読んだようなノリで、意地を張ることなく読みきることができました。
農業は私の職業上の専門ジャンルです。農業革命は1万2千年前に起きた人類史上最大級の出来事です。最も衝撃的、かつ頭の柔軟性を試されるような記述がいくつもあります。
「農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。」その上で「ではそれは誰のせいだったのか?王のせいでもなければ、聖職者や商人のせいでもない。犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの一握りの植物種だった。ホモ・サピエンスがそれらを栽培したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ。』 脳を逆立ちさせながら読まないと咀嚼が難しいですが、その表現法がとてもユニーク、センスにあふれているので、案外無理せず、夢中になることができました。こんなヘビーな本を何年かぶりに読むことができたのが、うれしくてしょうがないといった感じです。新刊「ホモ・デウス上下2巻」も読んでやるぞと張り切っているこの頃です。
どうか本年も宜しくご指導お願い申し上げます。
川西裕康
2018.12.13 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
お陰様で弊社は創立50周年、主要な行事もおおむね終了し、後は記念カタログ作成のみとなりました。忙しい時には、不思議と更に追い打ちをかけるような事態が発生するのは世の常でしょうか? 度重なる台風被害、塩害、異常高温で私共にとっての大切なお客様である農家の皆様も大変な被害を受けました。また同時期に会社歴史上最大の設備投資をした磐田ナーセリーが完成し、稼働の時期を迎えていました。
各地区のお客様には精一杯の対応をしたつもりですが、非常に不十分、不満や段取りの悪さを指摘されることも多くありました。改めてお詫び申し上げるとともに、引き続き現場応対、復旧を第一に活動してまいります。建設、土木現場で働く人の人手不足も年とともに危機的状況になりつつあります。そうした中で会社として未来の園芸農業、特に施設園芸に対してどのようなかじ取りをすれば、より社会に役立つことができるのか、本当に50周年をリセットしてゼロから組み立てなおす必要があると考えています。大規模化する施設園芸に対しては、より汎用性の高いAIによる制御、作業合理化ロボットの開発等が大きなテーマになるでしょう。中小園芸農家に対しては、生産から物流、販売の差別化等様々な局面でアイデアが必要になると思います。また社内においては、国の働き方改革に伴う総労働時間の短縮化という課題に対して、労働生産性を下げずに、今まで以上にお客様に良いサービスを提供するにはどんな働き方や仕組み、働く人の意識改革が必要になるのか、しっかり再構築して考える必要があります。。弊社のようにお客様に会ってナンボのアナログビジネスを基本としている会社にとっては尚更です。国内園芸農業の大きなターニングポイントを迎えていると自覚しています。会社としても半世紀を総括、リセットし、新たな半世紀に向けてしっかり目を開いて、前を向いて進んでまいりたいと決意しています。引き続きのご支援を宜しくお願い申し上げます。
川西裕康
2018.11.01 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
弊社創業50周年に当たり、ささやかな社史を編纂させていただきました。50年は半世紀、かつて人生50年と言われた時代がありました。現在では現役で働ける時間が約50年です。とは言ってもさすがに100周年時に創業時を生きて語れる人はいないでしょう。50年はやはり大きな節目、未来のため会社の羅針盤として歴史を記録することは、意義あることと考えました。しかしこれも50年間ご支援いただいたお得意様、仕入れ先、関係先、そして何よりも歴代の諸先輩、創業役員、また社員スタッフ皆様のお蔭と改めて感謝申し上げます。
昭和43(1968)年10月31日、弊社は豊橋・田原の4種苗店が新たに資本を出し、社員を転出させて産声を上げました。振り返ればまさにジャストタイミングでした。同年は東三河全域に豊川用水が開通し、地域農業の劇的な近代化が予見できる年でした。また日本経済は毎年10%以上の高度成長期、工業の発展と同時に農業も高度成長期を迎えていました。まさに「旬」だったのです。そうした時に手前味噌ではありますが、企業合同を成し遂げた4人の創業者の才覚、そして並外れた幸運を感じずにはいられません。性格や考え方も全く異なる4人の経営者の下で働く社員はもっと大変だったと思います。しかし需要が供給をはるかに上回る時代、内部の軋轢にとらわれる間もなく、どんどん拡販できたことが今日まで続く最大の要因であったことは間違いありません。新会社を信じて多くの注文を出していただいたお客様のおかげと改めて御礼申し上げます。
創業50周年を迎えるに当たり、未だに完全には解けない疑問があります。創業前、私は小学生でした。何度も父親の車に乗って現在の本社地を見に来ました。車の中で深刻そうに話し合う父と母の会話をよく覚えています。50周年を迎えるに当たり、残念ながら創業時の4名は既にこの世を去っています。最大の疑問は、誰がトヨハシ種苗((現トヨタネ)設立構想を持ち出したのか、またどうして合意できたのかです。実はこのことは私の父も含めて、創業者4名の誰からも具体的に聞いていません。それはある意味素晴らしいことで、誰も自分の手柄にしなかったということを意味します。近年ほぼ定説になったのは、創業の一人が、最重要な仕入先種苗メーカーの協力を得ながら発案し、他の3名が時節や当時の商売環境を総合的に勘案し、合意に至ったということです。合意の中の一つが、新会社は販売会社でありながら、自前の「研究農場」を持つということでした。このこともその後の弊社の発展と人財育成、商品開発につながったのです。
私たちトヨタネはこれからも「豊かさ実る、タネを。」を合言葉に、園芸農業の種蒔から収穫までの様々な課題解決に役立つ企業を目指して、真摯に、そして誠実に歩んで参ります。
皆様のより一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
川西裕康
2018.10.09 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
いきなり「ゲノム編集について」のタイトルをつけてみたが、正直さっぱり技術的には全くわからない。DNAの配列を正確に認識し、特定の場所を切断する「酵素」の発見と仕組みの解明がポイントと言われても、ほとんどの人には理解しがたいのが現状だと思う。
しかし一方、近未来最も重要な技術は「AI」(人工知能)と「ゲノム編集」であろうということは直感的に確信している。だから興味があり、解説本を読んだり、業界主催の講演も聞きました。ゲノム編集についての問題意識を私なりの視点で整理してみようと思います。
1.近年CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)という酵素の発見によって、ゲノム編集が非常に容易に、しかも低コストで実施できるようになった。専門分野であれば、大学院生レベルでも実験が可能と聞く。
2.一方、遺伝子組換え技術及びその成果としてのGMO作物について、日本及びヨーロッパでは社会の許容が難しい中で、「ゲノム編集」と遺伝子組換えの差異、境界線の認知が進まないこと、どちらかと言えば思想上は遺伝子組換えと同等と受け取られている傾向が強いことである。カルタヘナ法の適用範囲の有無についても明確な区分ができているとは思えない。
3.しかし1.で述べたように技術的・資金的なハードルが下がる中で、社会の許容が進まないことを理由に研究を停滞させると、米国や中国をはじめとした国々との技術的ギャップが拡大すること、現に日本においても、様々な飼料作物や加工食品、綿を用いた衣料には主にアメリカの遺伝子組換え商品が氾濫している。また今後は医療分野、特にガン治療等において大きな期待がかかるが、その多くの果実はゲノム編集積極国に利益をもたらすだけになる可能性がある。
4.ゲノム編集とは開き直っていえば、ダーウィンの進化論上の理論「突然変異」であり、まさに予期せぬ遺伝子の入替が起きることであり、遺伝子組換えは自然界では起きないが、ゲノム編集はその「偶然」を計画的に起させる技術であるということ。また交雑の後代を商品化すれば、遺伝子組換えの痕跡がなくなる。
5.従って近未来に考えられるのは、各メーカーの研究所レベルでは「ゲノム編集」は急速な勢いで活発に行われる、あるいはすでに激烈な競争に入っている。しかしその利用は「原種」や「親種」としての利用であり、商品としての成果物にはゲノム編集を活用したか否かは明確にしない、あるいは明確にする必要がないという方針が続くのではないかと推察する。その分「親種」の数は倍数的に増えるのではないかと思う。
川西裕康
2018.09.05 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
セピア色の写真を整理していたら、学生時代の登山を思い出した。山登りで一番楽しいのは、夏場の沢登り。なんといっても涼しいし、飽きない。尾根伝いの縦走も楽しかったが、時間を忘れるということはなかった。岩場に差し掛かった時の原則は一つ、3点確保(四肢のうち、一つだけを動かして前進する)で登ることが可能かどうかである。不可能と判断すれば、何時間かけても迂回する。
迂回はブッシュとやぶ蚊、時々蛇に阻まれ、正直嫌いです。
岩登りに入る前には必ず想像力を働かせる。今自分は命の危険を冒そうとしている。もし滑落すれば仲間に迷惑がかかるし、死んでしまうかもしれない。死んだら親が悲しむ(当時は携帯TELもない一人暮らし、沢登りに行くこと自体家族に報告していない!)。目の前の危険をしっかり認識し、滑落すれば多くの人を困らせ、悲しませることになるということを具体的に想像できるように少しだけ瞑想する。そしていざ、登攀。難所にさしかかったときには尚更、3点確保の意識と、想像力をビジュアル化するよう心がける。沢を登り切ると大抵は眺望の良い尾根に出る。その時の爽快感は格別です。また水系の源流を制覇したというのはなんだか私にはとても自己満足が得られるものでした。
3点確保の原則は経営をする上で最も大切な思想だと思っていますし、おかげさまでこの年になって、当時の思い出と今の私は繋がっていると強く感じるようになりました。しかしそれは少々保守的で、臆病すぎるかもしれません。スピードが求められる現在、上記の話には時間軸がありません。また2点確保も覚悟しないと、そもそも登れない沢もいっぱいあります。どちらかというと経営上はかつてよりも2点確保に挑んでいるような気もします。いずれにしても人工登攀や、ハングオーバーを一点確保で登るような芸当は自分には馴染まない。
が、どうしても登りたいときは2点確保も厭わない!そのような考えで進むことができたらと思っています。
川西裕康
2018.08.10 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
私が業界に入った頃(昭和50年代)、苗作りは農家にとって最重要な仕事、苗半作、または七分とまで言われた。良い苗を作ることが、篤農家の定義であり、良い収穫を得るための必須条件だった。それが平成に入るころから徐々に様子が変わってきた。多くの施設トマト農家は8月に定植する。栽培面積は増え、連作による土壌病害も深刻になり始め、接木という作業も必要になってきた。大規模栽培を指向する農家から徐々に買い苗に頼るようになり、現在も夏場の苗生産は全国的に供給が需要に追い付かない状態が続いている。私なりにその要因について考えてみた。
①真夏の接木の難しさ:春ならば、気候もよく、適切に保温・保湿させることで接木は比較的容易であるが、真夏40度も超えるような環境下で安定して接木を行うことは非常に難しく、一定の設備投資が必要となる。
②大規模志向と分業化:規模拡大を目指す農家は、生産に専念したい。育苗のための施設を別途用意するよりも、生産面積を増やしたい。
③夏休み少しは休みたい:苗作りは最も神経を使う農作業、苗を自作している間は、休めない。収穫中は休みが取れないほど忙しいので、結局1年中休めないことになる。家族サービスや旅行の計画も立てることができない。業者に委託したほうが精神的に楽。
④苗種類があまりに複雑:品種の選定、台木の選定、苗の種類(ポット苗・プラグ苗・グローブロック苗等)の複雑さ、1本植え、2本植え、はたまた1本植えの2本ピンチ苗等、選択によって無限大と言ってよいほどのバリエーションがあり、過去の経験値が追い付かない。
⑤タネ屋としては言いにくいが、タネ代もばかにならない:高価な種を定量で買うよりも必要本数の苗をピンポイントで買った方が結果としてお値打ち感がある。
結果として、日本農業が少数精鋭化すればするほど、「買い苗需要」は高まる。採算性は後から考えるとして、会社として静岡県磐田市に新たな苗生産施設を建設することを決めたのは、以上の理由です。
現在磐田市内で建設中「苗生産施設」
ドローンによる8/6撮影(北側より)
トヨタネ株式会社
川西 裕康
2018.07.13 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
デンソーさんとの出会いは、東北大震災の起きた激動の2011年、当時弊社は施設園芸の先進地オランダ視察を毎年実施していた。その視察を通じて多くの社員がハウス環境を適切に管理すれば、単位面積当たりの収量を飛躍的に向上させることが可能であるということを理解していた。また地域としても多くの若手生産者が「勘」による管理から、数値に基づいた管理の重要性に注目し始めた頃でした。
一方デンソーさんは、車関連事業以外の新規事業を模索していた。デンソーの理念「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい」から「農業支援事業」がその理念に沿うものの一つとして採用されたと聞いている。弊社の仕入れ先からの情報経由でデンソー担当者が弊社に見えた折、農業用ハウスの統合環境制御に関心があると申し出たところ、車の環境制御、つまり車内空間の最適環境を設計するのはデンソーのコア技術なので、農業用ハウスにも応用できるかもしれないと申し出ていただき、開発が始まった。当時農業用の高度な環境制御装置はオランダ製がほぼ独占していた。開発研究が始まってからの(株)デンソーさんの圧倒的なスピード感と、開発プロセスや商品品質へのこだわりに何度も度肝を抜かされた。それにしても、やりたいとは思いながらも開発部門も予算もないに等しい弊社の元に(株)デンソーさんが来てくれたのは、はっきり言ってこの上ない幸運でした。デンソーにとっては弊社の顧客やJAさんを通して施設園芸業界のニーズを把握することができた。2015年ついに国産初と言ってもよい高度な統合環境制御装置「プロファーム」を販売開始した。
しかし発売が進むにつれ、このプロファームの能力を最大限生かすためのハウスそのものの提案も必要ということに行きついた。(株)大仙さんは弊社と同じ豊橋を本拠地とする日本最大のハウスメーカーです。大仙も、ハウスという「箱」売りだけでなく、内部装置やノウハウを加えた付加価値の高い商品を開発したいという機運が内部にあった。そこで3社の提携が始まり、プロファームコントローラーの能力を最大限生かしつつ、イニシャルコストも低減させるというコンセプトの元、「プロファームT-Cube」の開発が始まりました。
そして現在は2019年5月の販売を目指して3社で新しいチームをスタートさせたところです。
代表取締役社長 川西裕康
2018.06.09 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
日本の施設園芸の規模は1999年5.5万haだったのが、2017年は4.3万haと20年間で約1万ha減少しました。近年は減少率も加速度がついているという。人口規模が1/2以下の韓国と比べても規模及び内部設備において後れを取っているのではとの焦燥感もあります。そうした現状を鑑み、今後はオランダに匹敵する高生産性を目指しながら、極力コストダウンの計られた1ha規模、投資額2億円程度のハウスが中心となることが望まれるようです(行政並びに業界団体等との会合の中での議論における私なりのまとめ)。そうした方向性に向け大規模ハウスが可能となる農地法の改正や政策議論が活発になりそうです。しかし国内の施設園芸メーカーにおいて、1ha規模を前提とした商品開発が活発とは必ずしも言えない状況にあります。オランダはすでに10ha以上の温室を前提とした技術開発に集約されていると聞きます。現状でも数ha規模であれば、相当な輸送料がかかろうとも、オランダ施設園芸をそのまま持ち込んだ方が安いし効率的という声もあります。
弊社が基盤とする東三河地方、中でも豊橋市はここ数年概ね20~40a規模の新設ハウスがたち始めています。大規模農家はこうした数10a規模のハウスを複数経営し、結果として1ha規模の施設経営を指向しているように見えます。雇用労力の確保は共通した深刻な課題ですが、複数ハウスの方が、労力の分散や様々なリスクの回避には適しているように感じます。また投資規模も2億というよりも取りあえずは1億が心理的な壁、1億投資が順調に償却できたらもう1億という方が経営の安定性は高いように思います。いずれにしてもどちらが将来の姿として適しているということではなく、近未来の日本の施設園芸の姿を展望しつつ、これからも専業プロとして頑張る生産者に寄り添える企業でありたいと強く念願しています。