ブログ「社長のつぶやき」

2019.07.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

忖度について思うこと、つぶやきです。

 この2~3年政治分野を中心に「忖度」という言葉が盛んに使われるようになりました。
忖度の意味を調べると「他人の心情を推し量ること、また、推し量って相手に配慮すること」とある。元々マイナスイメージとして使われる言葉ではないのですが、ぴったりはまる英訳も無いようで、日本人独特の他者への気遣いだと思われます。
 しかし忖度される側が権力者の場合は、その意味合いが忌まわしいものになる場合もあるよです。そして忖度した側が法を犯す行為に及んだ時は、忖度した側が罰せられる可能性はあるが忖度された側が法的責任を追及されることはほぼ皆無でしょう。もしそうだとすればこれは非常に巧妙なパワーハラスメントではないかと勘繰ってしまいます。ここまで言うと暗に現政権の批判をしていると思われがちですが、ふと自分を振り返った時、我こそはお山の大将、忖度する感性に乏しく、忖度されていることに気が付かない「我」であることに思い至りました。
プレーでの気遣い

 会社は進むべきベクトルを合わせることが大事だと言いながら、本当に理念を社員と共有できているのか、過度に忖度されているだけではないのか、たまに立ち止まって考えることができたならば、私ももう少し大人になれるでしょう・・・。
川西裕康

2019.07.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

交差点のひまわりが咲いた

 私が住んでいる家の前には豊橋市交通量の多い、しかも市電が90度大ききカーブする大きな交差点があります。その角には中途半端に矮性緑化木が植わっているのですが、毎年6月になると雑草だらけ、見るに見かねるほど見苦しくなる上に、たばこの吸い殻や飲みかけのペットボトル、時にはカップラーメンが捨てられることもあります。その一角に全く無断、思いつきでひまわりのタネを植えてみました。驚いたことに見事に芽を出しました。あとは雑草との戦いです。日本の畑は雑草との戦いという話は、商売柄も聞いていたのですが、実体験すると本当にびっくり、毎朝、毎夜、愛犬と散歩がてら雑草を抜くのですが、毎朝毎夜新たに生えてきます。2~3日出張するだけで、呆然とするほど雑草が暴れまわっています。雨が降らない日が続いたときは、店からバケツを持って水をぶっかけたりもしました。しかしついにそのひまわりが咲いたのです。うれしくて、うれしくて、こんな素朴なうれしさは60年の人生の中でかつて経験したことがないほどです。思わずつぶやいてしまいました。

交差点街路樹
交差点街路樹

開花前ひまわり
開花前ひまわり

ひまわり咲き始め
ひまわり咲き始め

開花ひまわりアップ
開花ひまわりアップ

開花ひまわり遠景
開花ひまわり遠景
川西裕康



2019.06.17 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

人財獲得と夏商戦を前にして

 皆さんこんにちは。6月は、新入社員が仕事に慣れ始め、次年度の新卒予定者もほぼ確定する月であります。人こそ力、人は城、人づくりは企業が長期に活躍するための最大にして唯一無比の条件です。そしていよいよ当社の帰趨を制する夏商戦の始まりです。2年前までは、施設園芸も露地栽培も比較的順調でしたが、一気に様変わり、単価安に苦しむ農家は今年の作付計画や戦略を再考しなければなりません。量で勝負するのか、品質重視(高単価)か、または人件費を含む費用の削減を第一に考えるのか、立場によって様々です。
 国際的な環境に目を移すと、参院選後には米国トランプ政権が農産物についてTPP以上の開放を要求することは間違いありません。米国の対イラン、対中国政策の行方によっては重油価格が暴騰しかねません。また海洋プラスチック汚染の規制強化が緊縛の問題に急浮上、プラスチックを多用する農業に対する規制も始まることでしょう。消費者による生鮮物のネット購買も一定の地位を獲得しつつある情勢です。また後継者難による事業承継の問題は農業にとどまらず日本の中小事業者の共通の悩み、M&Aの勧めをあおる手紙やメール、広告を見ない日はないくらいです。一方ITやAIを駆使した「スマート農業」という言葉は一人歩きしているような気もします。時代の空気は激変の最中です。
 そうした中、学生会向け説明会で、「弊社の基本は相対第一、アナログ勝負、大事なのは義理と人情、涙と汗!」と昭和言葉を連発すると、意外と反応があるのも事実です。
 農業の基本はお天道様をいかに味方につけるか、この基本は微動だに変わっていないと私は思っています。
川西裕康

2019.04.18 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

平成から令和へ

 2019年5月1日年号が平成から令和に変わります。
令和
弊社は4月決算、しかも前52期(2018.5.1~2019.4.30)は会社創立50周年に当たり、様々なイベントもさせていただきました。新たな50年に向かう最初の日に年号が変わると言うことは、とても意義深いと感じます。これからの50年、もっともっと良い会社にしたいと心から念願しています。
めまぐるしく変化する平成の30年間を大人として、社会人として過ごせたことは(昭和32年生)、本当にありがたく、幸せだと感じています。
 平成30年の最大の変化は言うまでもIT・通信革命の30年、1989年はワープロ習い始め、
ワープロ ポケベル ポケベルすらまだ普及していませんでした。衣食住は人が生きるための3本柱でしたが、その3つよりも重要なのが情報(通信・IT)となりました。経済的には失われた30年と言われ、個人の可処分所得が上がらない中で、情報に使うコストだけは上がり続けたわけですから、結果として「食」の単価が上がるはずがありません。
総需要が増えず、むしろデフレ社会の中で農業及び食料産業は生き延びる方策を模索してきました。そして少子高齢化、2008年には日本の総人口はピークアウトし、2019年は年間で40万人以上の人口減少が予想されています。日本はもはや「量」や「数」の力で世界に立ち向かっていくことはできません。「質」そして健康、更に次世代に残せる日本独自の「美」に目を向けていくことが肝要と思っています。国内の食料総需要は減少を続けるでしょうが、安心安全で質の高い国産農産物を求める国民の目線は不変と信じています。すべての動物にとって、とりわけ人間にとっては「食」はますます重要になることは疑いありません。60歳を過ぎた自分が証明しています。食欲、おいしいものを楽しく食べたいという欲求が何ものよりも勝っていることを自覚できるからです。弊社は引き続き「食」の分野で、しかもその入り口である農業、農家への奉仕を通して食料生産に役立つ会社であり続けたいと念願しています。
川西裕康

2019.03.22 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

ボヘミアン・ラプソディー観ました

 3月は喧騒の時、期末が近づき、売上固めをしながら、次年度計画作成に余念がない。何事も最終的な決定責任は社長にある。めくら判押せば良いのではないかと言う人もあるが、それでも決定するためには、内容をよく自分なりに咀嚼する必要がある。だからやたら忙しくなる。そんな折、クイーンのフレディ・マーキュリーにスポットを当てた映画「ボヘミアン・ラプソディー」を観に行きました。私にとってはビートルズのジョンレノンが絶対的存在でしたが、今はフレディに浮気しています。1970~80年代は私にとっても青春時代、当時クイーンといえば下品で、猥雑、やかましい怪しげなバンドという固定認識で振り向くこともありませんでした。
ロックバンド
今となっては自分の器量の狭さ、受容力の低さが身にしみます。時代も私も変わった。LGBTへの理解、そして多様性理解が時とともに変化していることを感じます。クイーンに最初に熱狂したのは日本女子のようなので、その感性力恐るべし、やはり日本女性は許容力が広いと確信しました。
 春は、梅、そして河津桜が咲き、今白木蓮が咲き始めました(3月14日)。
間もなくソメイヨシノも例年より早く咲きそうです。会社は2020年リクルートと4月からの新入社員受け入れに大忙しです。更に「働き方改革」に添えるよう労働条件を再整備することも待ったなしです。弊社はお客様の利便性を考慮し、土曜日営業も続けています。年間休日日数、年間労働時間、そして連続5日の有給取得出来る環境作り等、調整が一苦労。それでも学生に振り向いてもらうために、それに答えながら、生産性を高める努力と工夫をしていかないと取り残されてしまいます。花も咲き急いでいるように感じる今年の春、会社も新年度の準備に大慌てです。
川西裕康


2019.02.14 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

持続可能な農業について

 今年は暖冬、好天続きで冬野菜の値段が相対的に安い。弊社にとっての重要品目である施設トマトも安値が続いている。近年の活発な設備投資による暴落懸念も一部ささやかれており、真相はよくわからない。いずれにしてもこの2~3年に大きな設備投資をした農家にとっては、正念場となっている。弊社としては生産性アップと省力化技術の推進による単位経費のコストダウンでお役にたてるよう努力を重ねるしかない。国の方向としては、農業基盤の弱体化による栽培面積減少を少数精鋭の大規模農家あるいは法人による高効率大規模園芸を推進する方向で進んできたことは間違いない。
 4ha規模の次世代施設園芸モデル事業を経て、現在は1ha規模の施設園芸モデルを模索している。この方向性は、将来の日本農業にとって唯一「持続可能」な方針なのかどうかという疑問も一方で増えてきたように思う。今年5月から国連の「家族農業の10年」が始まります。
家族農業
日本はその共同提案国になっている。現在においても先進国における農業経営体に占める家族農業の割合は概ね95%あります。家族経営にも弱点や克服が困難な点が多いことはお客様からよく聞いていますが、少なくとも経済的な逆境には一番強いだろうと感じます。また私の周辺でも、定年帰農を実現させて、生き生きと暮らしている方も多く見える。そういう人は大規模経営を望んでいないが、高品質な生産物を作ろうと熱心な方が多い。またもっと若い層においても「半農半X」というライフスタイル、生き方がじわじわと支持を拡大しているようにも感じます。日本農業の将来を鑑みるとき、やはりその「多様性」を大切にすることが肝要だと最近強く感じます。大規模かつ企業的農業を指向する方向も大事にしながら、多様な農業で将来の日本農業を下支えすることもとても大事だと思います。それは生き方そのものでもあり、21世紀の新たな思想や哲学を形成する流れにもなっていくのではないかと想像します。「多様性」に対する理解があるか、「持続可能性」の観点からどうなのか、この2点がキーワードだと思っています。
川西裕康

2019.01.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

「サピエンス全史」表現法とてもユニークで読みきり満足な正月!

 2019年が始まりました。昨年は弊社50周年行事もあり、皆様には大変お世話になりました。本年も昨年同様何卒宜しくお願い申し上げます。
 昨年末には、大仙(株)と(株)デンソーと3社で出資したトリシードアグリ(株)を立ち上げました。今後は「T-cube」ハウス及びプロファーム関連商品の拡販に尽力して参ります。また同様に10月に完成した磐田ナーセリーも今年に入って本格的な稼働が始まりました。スタッフ一同、良苗の生産により一層努力します。
 さて皆さん今年のお正月はいかがお過ごしでしょうか。今年はたっぷり時間がありました。近年は老眼も進み、かつてのような読書欲もなくなり、夜はちょっぴりお酒を飲んで早く寝たいというのが私の偽らざる心境です。最後に読んだヘビーな本と言えば、確か3年前の正月、トマ・ピケティの「21世紀の資本論」、途中で断念したいと何度も思いながら、意地になって読み切ったのを覚えています。ところが今年、新進気鋭のイスラエル人歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史上下2巻」が世界中で1000万部以上売れているという話を聞き、自分もこのまま老けて読書欲を失いたくないというささやかな葛藤の間で、気合を入れて読んでみました。訳者の表現力もあるのでしょうが、村上 春樹さんの本をかつて読んだようなノリで、意地を張ることなく読みきることができました。
読書
 農業は私の職業上の専門ジャンルです。農業革命は1万2千年前に起きた人類史上最大級の出来事です。最も衝撃的、かつ頭の柔軟性を試されるような記述がいくつもあります。
「農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。」その上で「ではそれは誰のせいだったのか?王のせいでもなければ、聖職者や商人のせいでもない。犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの一握りの植物種だった。ホモ・サピエンスがそれらを栽培したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ。』 脳を逆立ちさせながら読まないと咀嚼が難しいですが、その表現法がとてもユニーク、センスにあふれているので、案外無理せず、夢中になることができました。こんなヘビーな本を何年かぶりに読むことができたのが、うれしくてしょうがないといった感じです。新刊「ホモ・デウス上下2巻」も読んでやるぞと張り切っているこの頃です。
 どうか本年も宜しくご指導お願い申し上げます。
川西裕康

2018.12.13 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

ポスト50周年は新生トヨタネを目指す

 お陰様で弊社は創立50周年、主要な行事もおおむね終了し、後は記念カタログ作成のみとなりました。忙しい時には、不思議と更に追い打ちをかけるような事態が発生するのは世の常でしょうか? 度重なる台風被害、塩害、異常高温で私共にとっての大切なお客様である農家の皆様も大変な被害を受けました。また同時期に会社歴史上最大の設備投資をした磐田ナーセリーが完成し、稼働の時期を迎えていました。
磐田ナーセリー
各地区のお客様には精一杯の対応をしたつもりですが、非常に不十分、不満や段取りの悪さを指摘されることも多くありました。改めてお詫び申し上げるとともに、引き続き現場応対、復旧を第一に活動してまいります。建設、土木現場で働く人の人手不足も年とともに危機的状況になりつつあります。そうした中で会社として未来の園芸農業、特に施設園芸に対してどのようなかじ取りをすれば、より社会に役立つことができるのか、本当に50周年をリセットしてゼロから組み立てなおす必要があると考えています。大規模化する施設園芸に対しては、より汎用性の高いAIによる制御、作業合理化ロボットの開発等が大きなテーマになるでしょう。中小園芸農家に対しては、生産から物流、販売の差別化等様々な局面でアイデアが必要になると思います。また社内においては、国の働き方改革に伴う総労働時間の短縮化という課題に対して、労働生産性を下げずに、今まで以上にお客様に良いサービスを提供するにはどんな働き方や仕組み、働く人の意識改革が必要になるのか、しっかり再構築して考える必要があります。。弊社のようにお客様に会ってナンボのアナログビジネスを基本としている会社にとっては尚更です。国内園芸農業の大きなターニングポイントを迎えていると自覚しています。会社としても半世紀を総括、リセットし、新たな半世紀に向けてしっかり目を開いて、前を向いて進んでまいりたいと決意しています。引き続きのご支援を宜しくお願い申し上げます。
川西裕康

2018.11.01 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

創業50周年誌発刊にあたって

 弊社創業50周年に当たり、ささやかな社史を編纂させていただきました。50年は半世紀、かつて人生50年と言われた時代がありました。現在では現役で働ける時間が約50年です。とは言ってもさすがに100周年時に創業時を生きて語れる人はいないでしょう。50年はやはり大きな節目、未来のため会社の羅針盤として歴史を記録することは、意義あることと考えました。しかしこれも50年間ご支援いただいたお得意様、仕入れ先、関係先、そして何よりも歴代の諸先輩、創業役員、また社員スタッフ皆様のお蔭と改めて感謝申し上げます。
 昭和43(1968)年10月31日、弊社は豊橋・田原の4種苗店が新たに資本を出し、社員を転出させて産声を上げました。振り返ればまさにジャストタイミングでした。同年は東三河全域に豊川用水が開通し、地域農業の劇的な近代化が予見できる年でした。また日本経済は毎年10%以上の高度成長期、工業の発展と同時に農業も高度成長期を迎えていました。まさに「旬」だったのです。そうした時に手前味噌ではありますが、企業合同を成し遂げた4人の創業者の才覚、そして並外れた幸運を感じずにはいられません。性格や考え方も全く異なる4人の経営者の下で働く社員はもっと大変だったと思います。しかし需要が供給をはるかに上回る時代、内部の軋轢にとらわれる間もなく、どんどん拡販できたことが今日まで続く最大の要因であったことは間違いありません。新会社を信じて多くの注文を出していただいたお客様のおかげと改めて御礼申し上げます。
 創業50周年を迎えるに当たり、未だに完全には解けない疑問があります。創業前、私は小学生でした。何度も父親の車に乗って現在の本社地を見に来ました。車の中で深刻そうに話し合う父と母の会話をよく覚えています。50周年を迎えるに当たり、残念ながら創業時の4名は既にこの世を去っています。最大の疑問は、誰がトヨハシ種苗((現トヨタネ)設立構想を持ち出したのか、またどうして合意できたのかです。実はこのことは私の父も含めて、創業者4名の誰からも具体的に聞いていません。それはある意味素晴らしいことで、誰も自分の手柄にしなかったということを意味します。近年ほぼ定説になったのは、創業の一人が、最重要な仕入先種苗メーカーの協力を得ながら発案し、他の3名が時節や当時の商売環境を総合的に勘案し、合意に至ったということです。合意の中の一つが、新会社は販売会社でありながら、自前の「研究農場」を持つということでした。このこともその後の弊社の発展と人財育成、商品開発につながったのです。
 私たちトヨタネはこれからも「豊かさ実る、タネを。」を合言葉に、園芸農業の種蒔から収穫までの様々な課題解決に役立つ企業を目指して、真摯に、そして誠実に歩んで参ります。
皆様のより一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
川西裕康

2018.10.09 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

「ゲノム編集」について

 いきなり「ゲノム編集について」のタイトルをつけてみたが、正直さっぱり技術的には全くわからない。DNAの配列を正確に認識し、特定の場所を切断する「酵素」の発見と仕組みの解明がポイントと言われても、ほとんどの人には理解しがたいのが現状だと思う。
ゲノム
しかし一方、近未来最も重要な技術は「AI」(人工知能)と「ゲノム編集」であろうということは直感的に確信している。だから興味があり、解説本を読んだり、業界主催の講演も聞きました。ゲノム編集についての問題意識を私なりの視点で整理してみようと思います。
1.近年CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)という酵素の発見によって、ゲノム編集が非常に容易に、しかも低コストで実施できるようになった。専門分野であれば、大学院生レベルでも実験が可能と聞く。
2.一方、遺伝子組換え技術及びその成果としてのGMO作物について、日本及びヨーロッパでは社会の許容が難しい中で、「ゲノム編集」と遺伝子組換えの差異、境界線の認知が進まないこと、どちらかと言えば思想上は遺伝子組換えと同等と受け取られている傾向が強いことである。カルタヘナ法の適用範囲の有無についても明確な区分ができているとは思えない。
3.しかし1.で述べたように技術的・資金的なハードルが下がる中で、社会の許容が進まないことを理由に研究を停滞させると、米国や中国をはじめとした国々との技術的ギャップが拡大すること、現に日本においても、様々な飼料作物や加工食品、綿を用いた衣料には主にアメリカの遺伝子組換え商品が氾濫している。また今後は医療分野、特にガン治療等において大きな期待がかかるが、その多くの果実はゲノム編集積極国に利益をもたらすだけになる可能性がある。
4.ゲノム編集とは開き直っていえば、ダーウィンの進化論上の理論「突然変異」であり、まさに予期せぬ遺伝子の入替が起きることであり、遺伝子組換えは自然界では起きないが、ゲノム編集はその「偶然」を計画的に起させる技術であるということ。また交雑の後代を商品化すれば、遺伝子組換えの痕跡がなくなる。
5.従って近未来に考えられるのは、各メーカーの研究所レベルでは「ゲノム編集」は急速な勢いで活発に行われる、あるいはすでに激烈な競争に入っている。しかしその利用は「原種」や「親種」としての利用であり、商品としての成果物にはゲノム編集を活用したか否かは明確にしない、あるいは明確にする必要がないという方針が続くのではないかと推察する。その分「親種」の数は倍数的に増えるのではないかと思う。
川西裕康