ブログ「社長のつぶやき」

2022.02.16 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

冬来たりなば春遠からじ

今年の冬は例年以上に寒い日が続いたような気がする。地球温暖化と言われる中、ブレが激しくなっているのだろうか?
それでも今年は春が待ち遠しい。新型コロナウイルスによるパンデミックから開放される日が近いのではとの期待が上回っている。
「冬来たりなば春遠からじ」日本の古いことわざだと思っていたら原典はイギリスの詩人シェリー「西風に寄せる歌」の一節「If winter come, can spring be far behind?」であるとのこと。
この原稿を書いている2月15日現在、13都県の蔓延防止措置が3週間延長され、3月6日までとなっている。おそらく今がピーク、あるいは少し減少傾向と思われるので、もう少し我慢すれば第6波が終焉すると強く期待している。仮に第7波があったとしてもかなり穏やかな形になるだろうと信じたい。

梅の花が咲き、桜のつぼみが確認される早春は私にとっても大好きな季節です。
新卒採用活動もこれから本番を迎えるが、弊社でも現状はすべてNet配信、Net選考。大事な青春時代の2年間をコロナ禍で活動が制約された学生は、私の目線からは大変気の毒だと思うが、彼等にとって2年間の経験は一部常態化(普通のこと)しているのではないだろうか?
そう考えると今後の社会における行動様式は大きく変わるであろうと想像する。

農業も大打撃、冠婚葬祭や外食産業に依存する農産品は暴落した。仕入原料のインフレと販売商品の下落が追い打ちをかける。食料廃棄の低減運動は社会にとって良いことだが、農産物市場にとっては縮小を意味する。今後地球環境問題・温暖化対策がどのような変数となってアウトプットされるのかは未知数、正にいばらの道です。
それでも今回のコロナ禍を通じて多くの消費者が、国産の新鮮な野菜や果物を食することの価値観、幸せを今まで以上に感じてくれたなら、中長期的には農家にも明るい未来があると信じたい。

「冬来たりなば春遠からじ」この言葉を念じて、桜の頃にマスク無しで賑やかに楽しい宴会、美味しい食事、ついでにお酒も気兼ねなく飲めたら嬉しいですね。

2022.01.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

西暦2100年が見えますか?

謹賀新年 あけましておめでとうございます。正月はありがたい。年を取るたびに頭の中はウイルスだらけになりますが、新年はウイルス除去を実行しようとする気にさせる。例えば長年お付き合いのあるお客様や知人に対しても、初めてお会いする位の気持ちで接するように心がける。算盤で言えば「願いましてはご破算にて」の気持ちで世界を見直して見ようと。そうするとたまに今まで全く見えなかった視点が見えることもある。年を取るということは頑固になる、価値観が固まって自分にとって心地よい状態しか受け入れられなくなるからだろうと思いますが、そこに柔軟さや変化への挑戦欲が加わらないと、せっかくとった年の価値がない、そんな前向きの気持ちにさせてくれるのがお正月だと思っています。

 それにしても世界情勢は混沌、各地で紛争は絶えず、地球温暖化を巡って「原子力」の再評価も盛んに行われています。一方でやや強制的な二酸化炭素排出削減施策が、有用資源の価格高騰につながっているのも間違いない。
 経済活動の継続性と環境目標達成への努力をウインウインの関係にできなければ、どこかで「破綻」が生じるだろう。人間とはなにか、民主主義や資本主義のあり方はどうあるべきなのか真剣に問い直す必要がある。もっと具体的には成長率至上主義からの脱却や「債権の暴落」懸念への対処も見据えながら、未来の舵取りを行うのは至難の業だろう。前にも書かせていただいたが「地球が危ない」わけではなく「人類が危ない」のである。個人的なことですが私にも孫ができた。孫は可愛い。無事に一生を終えることができるなら西暦2100年に生存している可能性は高い。2100年の人類のために何をすべきなのか、全くみえてこない。いわば無責任状態です。孫がおばあさんになった時、はるか前に死んだおじいさんの時代をどう評価するだろうか?

 現実に戻ろう。卸物価が高騰する中、相変わらず生鮮青果物市場は低迷を続けている。我々にとって大切なお客様である農家の経営状況はますます厳しい。今環境のみを優先させて、コストの高い農業を提案できるような状況にはない。しかし近い未来には農家にとっても低コスト・高生産性に繋がり、しかも環境に優しい商品の開発や販売ができる会社でありたいと願っている。
 SDGsへの取り組み、2050年カーボンニュートラルを志向しつつ、しかも農家にとっても価値のある提案ができる会社を目指そう、2100年のために。そんな想いだけは強く持っています。

2021.12.08 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

日本農業のピンチ(食品と生鮮食料品の違い)

2021年後半は値上げラッシュの年として歴史に記憶されるかも知れない。

超マクロ視点ではウイズコロナ時代を迎え世界の需要が旺盛となる一方、CO2排出産業の供給抑制による品不足が大きな要因ではないだろうか。

需要旺盛による秩序あるインフレは歓迎だが、供給抑制によるインフレはスタグフレーションを招きかねない。日本はその最右翼だ。
更にスタグフレーションは零細業種を直撃する。まさに日本農業はそれに当てはまる。

このピンチを自分なりになんとか解説したい、この思いを何とか伝えたい。

食品と生鮮食料品の違いをよく見てほしい。

大手資本の「食品」は値上げラッシュです。
小麦関連製品・油脂製品・冷凍食品・加工食品は軒並み値上げを発表している。
大手食品企業には自ら値段を決め、価格を上げる力があるからです。

一方多くの消費者の暮らし(年収)は良くなっていない。食料品に向けられる家計支出は増やしたくない。
仮に月の食料向け支出を10としよう。「食品」と「生鮮食料品」の支出割合が5:5だと仮定します。
今回「食品」の大幅な値上げによって支出割合が6になったとします。

すると多くの家庭では「生鮮食料品」の支出を4にせざるをえなくなる。可処分所得が上がっていないからです。
生鮮食料品の殆どは農家が生産し、アダム・スミスの資本論が通用する「市場」で取引される。
買手は4しか購買力のない消費者相手なのだから、高値はつけられない。

今年の冬の生鮮食料品相場は相当な異常気象による供給不足が発生しない限り、高くはならない。むしろ安くせざるをえないだろう。

一方農家にとっては、生産のための原材料仕入れは大幅なインフレ、特に重油や肥料・飼料価格の大幅な値上がりは大打撃。

本来生鮮品も自ら値決めができるなら最低でも10%以上は値上げしたいところだろう。
仕入生産資材の大幅な上昇、そして販売価格の下落という2重苦に耐えるのにも限界がある。だから6次産業だ、直売やネット通販を考えるべきだというのは暴論だ。
ほとんどの農民は市場を通して顔の見えないお客様のために精魂込めて高品質商品を生産しようとしている。

日本農業にとってかつてないほどのピンチです。

2021.11.09 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

今年の冬は農業の正念場

はや今年も11月。

彼岸花が秋の到来を教えてくれた。
程なく自宅近くの金木犀の花が咲き始め、秋本番を告げた。

でもおかしいぞ、10月下旬また金木犀の花が咲いた。
でも1回目の開花ほど香りはない。
あれ、1ヶ月前の香りは幻だったのか?
よくよく調べてみると金木犀は2度咲きする年もあるらしい。
これも異常気象なのか、秋冬野菜相場がどうなるのだろうか、職業柄直感的に不安がよぎった。
案の定新聞紙上には11月の野菜市況は前年より更に安くなる見通しとのこと。

長引くコロナ禍の中で、多くの国民は食糧問題により敏感になっている。
自給率の低下と担い手の高齢化で日本農業は崩壊するのではないかと心配している人も多いでしょう。
更に国際的な穀物市況の高騰で、スーパーに並ぶ食料品は値上げラッシュです。

ただその割には今回の総選挙において農業問題は大きな争点にならなかった印象があります。
長期的視点では食糧問題は人類最大の課題であることは間違いない。

ただ短期的な視点では、次の理由で日本農業は最大のピンチを迎えている。

① 生産過剰と市場価格の暴落懸念
2020年産食料米は過剰在庫を抱え、更に2021年産もやや豊作、来年の昨付け調整に国は頭を抱えている。
現状のお米価格でも専業農家の採算性は厳しい。
ここから更に10%、20%下がれば壊滅的な事態となりかねない。
園芸農家においても、今年の冬は豊作貧乏の危険性が高い。

現場が恐れているのは「生産不足」ではなく、「生産過剰」による暴落懸念という事を是非多くの人に理解してもらいたい。

② 卸売価格の暴騰と小売価格の下落
農家が生産のために必要な資材は卸売価格の分類です。
石油・肥料・石油由来資材・飼料価格等の大幅値上げは農家の努力による生産性の上昇を遥かに上回る勢いです。
生産者(農家)にとっては仕入れコストの大幅な上昇です。
しかし多くの農産物は市場で取引され、小売市場で流通する。
その消費者価格は上がるどころか、むしろ下がっている。
今年の冬は更にその傾向が強まりそうな情勢下にあります。

③ 後継者の躊躇
農業の後継者問題はかなり前から深刻であることは変わりないが、それでも「農業」に誇りと生きがいを持って飛び込もうとしている若者はかなりいる。
しかしそうした人にとってもこの数年の苦境を目の当たりにして、躊躇する動きが顕在化してきた。
結果として担い手の高齢化に拍車をかけることになっている。
 
小生は業者の立場なので、②にも関わりがあり、自分の首を絞める様な内容ですが、多くの人が「食料危機」を唱える中、現場の苦悩との認識ギャップを少しでも理解していただこうと書いてみました。

2021.10.01 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

地産地消は電力こそ大事

  地産地消といえば、一般的には農産物についての概念と思われています。
近い言葉としてイタリア発の「スローフード」、韓国での「身土不二」運動などが有名です。
集中よりも分散、人工的な物よりも自然に近いものが大事というイメージに繋がります。

 地産地消のメリットは大きく2つあります。
一つは「フード・マイレージ」が小さく、結果としてCO2排出量低減に役立つという実利的な面。
もう一つは地元産の伝統食材を大事にすることが健康に良いというイメージです。
ほとんどの場合「地産地消」は肯定的な意味合いで使われることが多いと思います。

  かつて市の農業委員をさせていただいた折、こんな討論がありました。
一部の委員が地産地消の推進を唱えた際、猛然と批判の意見を述べたキャベツ農家が見えました。
「豊橋の甘藍(キャベツ)栽培は典型的な輸送園芸だ。温暖な気候を利用した冬季収穫の一大産地、全国に売ることを大前提としている。地産地消の推進は自らの首を締めるようなものだ」と。

  私は大いに納得しました。
日本は緯度的には極めて縦長で、亜寒帯から亜熱帯地区まで有する。
食料自給率の低さをよく問題にされるが、一方で1年を通して国産野菜を食することができる稀有な国でもある。
スーパーマーケットに行けばどの季節でも当たり前のように国産の甘藍・胡瓜・トマト等が並べられている。

  意外と消費者はこの日本の特異性を理解していないような気がする。
カロリーベース食料自給率の低下を大問題と考える人の立場もわかるが、野菜・果樹:花卉生産において非常に恵まれた国であることも間違いない。
水も概ね豊富でしかも良質です。
北海道に住む人が地産地消で冬にトマトを食べたいと思うなら、膨大なエネルギー支出(CO2排出)を覚悟しなければならない。

 こと日本においては「地産地消」よりも「適地適作」のほうがエネルギー収支上も有効だろうと思います。
尤も、旬の露地野菜以外は食べないと言う人には、「地産地消」は大切な概念ですが、カーボンゼロを目指す2050年においてもかなり少数派だろうと推察します。

 そんな時ふと思い当たったのがエネルギー、とりわけ電力の地産地消の取組こそ大事ではないかということです。
東京都に食料の地産地消を求めても無理だと思うが、電力ならもう少し地産地消を考えることができるのではないか?
もちろん原電が前提ではなく自然エネルギーを前提として。大都会には、たとえ景観を損ねても、大型の海上風力発電の景観を受け入れてもらうしかないのではないか。

 電力の地産地消は技術的にも経済的にも莫大な課題があるようですが、少なくとも2050年カーボンニュートラル、地球温暖化防止の観点からも電力の地産地消、あるいは自給自足概念の方が、食料の「地産地消」よりも遥かに人類生存上の重要問題だと思うこの頃です。

2021.09.06 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

2050年脱炭素社会の実現にむけて

 2021年9月 新型コロナウイルス禍収まらず、政局も混迷。忘れがちであるが、昨年10月開催された臨時国会冒頭の所信表明で菅義偉総理は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。本年度農林水産省は持続可能な食糧生産システムの確立と農業界におけるカーボンニュートラルを旗印とした「みどりの食料システム戦略」を発表しました。

 身近な問題としても、今年の夏の異常気象(特に長雨)は、「地球温暖化」と関係があると想像せざるを得ない。 農家も、育苗や定植に大変苦労されているでしょう。野菜苗生産を業務とする弊社においても大きな影響がありました。またSDGsへの取組も必須案件です。特に若い世代は関心が高い。かつて学生からCSR活動について質問を受けたが、現在ではSDGsへの取組について答えられなければ、学生から見向きもされない時代となるでしょう。

 私事ですが、私は1972年ローマクラブが発表した「成長の限界」を真剣に信じた一人です。石油は20世紀中に枯渇するかもしれないのに、車を乗り続ける人は「悪」と思い詰めた程です。しかしそうはならなかった上に、22歳からずっと自家用車を乗り続けています。何たることでしょう。1993年国連が発表した「持続可能な成長」(Sustainable Development)という言葉は座右の銘にしたいほどでしたが、ほとんど「枕詞」になりつつある。そして2050年脱炭素社会の実現と言われても、感受性が鈍くなった60代の自分にはさっぱり現実味がわかない。「みどりの食料戦略」に至っては、商売にも大きく関係しそうですが、具体的なロードマップが見えてこない。人間性が相当劣化しているのではないかと自問自答します。そもそも地球が危ないわけではなく、人類が危ないのであって、地球の平均気温が4度上がっても人類は滅亡するかもしれないが地球は生き残る。地球自体はそれを望んでいるのかもしれない。1億年後には新たな高等生物が1億年前の人類の自滅を教訓として小学校の授業に活用しているかもしれない。

 ボヤキのように受け取られたら残念ですが、それでも次世代そしてまたまだ見ぬ世代の人類が快適に暮らせる地球を維持する責任は、現代の我々にある。現況 弊社を取り巻くビジネス環境は厳しく、またお客様である農家の経済環境も非常に厳しい。しかし地球環境問題への取組、そして持続可能で発展を続ける農業への取組は会社の生存理由そのものだと自覚しています。 「みどりの食料戦略」についても会社として取り組めそうな項目あれば少しでも確実に実を結ぶよう活動したいと思っています。 それにしても当面は新型コロナウイルス禍の終息を願う日々が続きそうです。

2021.08.12 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

最近気になる4文字熟語 「安全安心 誠心誠意 不要不急」

 弊社の第54期(R2.5月~R3.4月)は大変厳しい内容でした。今期は前期の反省点を踏まえ、しっかり挽回しようと思っていますが、その前提は夏頃までに新型コロナウイルス禍も終息するだろうということでした。恐らく菅首相も同じような楽観論に立っていたのではないかと推測します。ところが現実は東京オリンピックに合わせたかのように感染が急拡大、今までにない深刻な様相となっています。菅首相はじめ政府及び組織委員会は「安全安心」という言葉を繰り返し述べて来ましたが、安全というのは客観的な指標に基づく言葉であり、その反対語は「危険」です。「東京でのオリンピックの開催には最大限の安全対策を取るが、リスクが残ることは否定できない。それでもオリンピックの自国開催はリスクを上回る価値がある」と言うべきだったのではないでしょうか。オリンピックが終わった今、国民と世界のアスリート向けに、リスクに耐えていただき、心から感謝すると言ってもらえば、多くの国民ももう少し納得感があったのではないでしょうか。リーダーはリスクを取ると決めたとき、その意志を明確に、しかも気持ちをこめて伝えるべきだと強く感じました。安全安心という4文字熟語の重み、強いて言えば価値観を大きく下げてしまったような気がします。

 また「誠心誠意」という言葉もよく使われますが、これも不祥事が起きた場合の責任者が、その本質・真実を隠そうと、今後このようなことがないよう精一杯頑張りますという時に使う言葉に成り下がってしまったような気がします。本来は座右の銘ともなる4文字熟語です。そもそも経営者は誠心誠意努めたが結果は赤字でしたなどとは社員に言えない。結果がすべてだからです。嘘をついてでも隠したいことがある場合に使う言葉になっていないだろうか。

 もう一つ 緊急事態発令下、「不要不急」な外出を避けるように再三広報されています。不急はまだわかる。今すぐでなくても良いことはコロナが収まってからにしようと私も考える。しかし「不要」については、「特に必要でないこと」と定義されています。特に必要のないことはそもそもしないのではないか? 何らかの必要を感じて人は行動する。したがって不要不急な外出かどうかを判断するのは非常に難しい。「不要不急かどうかは個人の判断」との某大臣の発言は論理的には正しい。まるで呪いの言葉のように毎日言われ続けると、この4文字熟語はいずれ人々が忌み嫌う言葉にならないかなと余計な心配をしてしまいます。まあどうでもいいと言われればそれまでですが・・。

 評論家のようなブログになりましたが、要は経営環境厳しい中、自分も経営者として一つ一つの言葉をしっかり吟味して、しっかり消化した上で責任も持って述べる事が大事と改めて認識したということです。会社も正念場、しっかり前を向いて良い結果が出せるよう頑張ります。

2021.06.10 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

「安心・安全」な〇〇


6月に入りましたが、9都道府県には緊急事態宣言が継続中です。
6月20日まであと2週間、東京オリンピック開催判断も含めて最も重要な季節となりました。
新型コロナ禍の行方は、仕事にも大きく関わるだけに、とても気がかりです。

このところ「安心・安全」なオリンピック開催を目指す等、政府筋から「安心・安全」という言葉が頻発されています。

この言葉はかつて農薬取扱にあたってポジティブリストが採用される際、業界の講習会でよく聞いた言葉です。

当時の講師曰く(名前忘れたが、官の人であることは間違いない)、「安心」とは具体的な基準があるわけでなく、主観的な心のあり方であり、「安全」とは具体的な数値基準があり、法で認められる範囲内で適正に農薬を使用する限りは「安全」であると聞きました。

ただポジティブリストの採用に当り、異なる作物の隣接農地から飛散した農薬が、当該作物にとって適用外農薬である場合、0.01PPMを超えると「安全」ではなくなるのでとにかく飛散防止に努めてほしいとの内容でした。

これは大変なことだと思いました。

ここ豊橋でも柿や温州みかんの隣にキャベツ畑が広がることもある。
キャベツ農家が厳密に農薬の使用基準も守っていても、飛散によって0.01PPM以上の適用外農薬が検出されることはありうる。
ましてそのことがメディアに報道されれば、産地にとっては壊滅的な風評被害を招きかねない。
左様に「安全」とは具体的、論理的、数値上の基準に基づく用語であると教えていただきました。

しかし残念ながら今回の東京オリンピックをめぐる政府筋の「安全」について、具体的な数値基準が示されているとは思えない。
まして農薬のようなポジティブリスト制度に準じるならば「安全」はほぼ100%ありえない。10万人に一人陽性者が出たら、「安全基準」を満たさないことになる。
もうここまでくれば「安全」という言葉はやめて、「必ずしも100%の安全は望めないが、オリンピックを開催する大義はリスクを遥かに上回る」というべきではないだろうか?
まして「安心」は心のあり方ですから、例えワクチン接種が進んでも何割かの国民は「安心」ではないという気持ちは変わらないだろう。
企業運営においてもこうした状況はしばしば起きる。
そのような時は、リーダーが自分の考え、想いを熱く伝えるしかないだろう。
会社であれば批判する社員が多いほど、ある意味良い会社だと私は思う。
東京オリンピックの開催是非についてもすでにその時がきたと私は思っています。

2021.05.07 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

5月は会社新年度

弊社は4月末決算のため5月1日が新年度となります。

新年度は気分一新と行きたいところですが、ゴールデンウイーク週間と重なり、気勢は上がりません。
ゴールデンウイークが終わってやっと新年度という感じです。
しかしそのゴールデンウイークも2年連続新型コロナウイルス禍となりました。

毎年5月2日(日曜の場合は前日)は豊橋駅前のホテルアソシアに全社員があつまり「経営計画発表会」を開催するのが弊社の慣習ですが、2年連続でキャンセル、ZOOM利用の遠隔会議となりました。

私にとっては年に一度の最高の舞台、いわば「お立ち台」ですが、その「楽しみ」を奪われたようなものです。
前期の決算が上々であれば更に気分は最高、発表会後の新入社員の紹介、そして乾杯は至福の時となるはずでした。

今年はその前提がすべて暗転しました。

社長ってなんだろう?
結局自分満足のセレモニーに過ぎないのではないか。
お客様第一と言いながら、自分ファーストではないか?

改めて原点に立ち返れば、この経営計画発表会が「増客」にどう結びつくのか、論理的に説明できるのだろうか? おかげで色々なことを考えました。

コロナは人を哲学者にすると聞いた覚えがありますが、少し同感です。
忙しい忙しいと言いながら、なんのことはないほとんど生産性のない会議や出張、接待・懇親と称しながら自分が「楽しい飲食をしたい」と思っていただけではないか。
現にルーティンワークを持たない多くの社長は「仕事」を取り上げられて結構暇を持て余しているようです。
それでも業績が上がっている会社ならば、素晴らしいですね。
経営者の「無駄な仕事」を消し込んでいけば相当な時間と経費の節減になるでしょう。

そうは言うものの弊社では12月も決算中間報告と時事案件を中心に「下期勉強会」という会合があります。
会議終了後は大忘年会です。
色々後ろ向きの話をしましたが、やはり自分はアナログ人間、なんとしても12月にはコロナ禍が収束し、良い決算報告と美味しい乾杯がしたいと心から念願しています。

2021.04.02 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]

4月は新年度入り

 弊社の決算は4月末ですが、組織上は4月より新年度となります。異動を命じられた社員は4月1日新しい部署で迎えることになります。またなんと行ってもこの日は新入社員の入社式です。弊社の経営計画書には「人材採用は、新卒採用を基本とする」と明記されています。今年もお陰様で7名(男4名 女3名)の新卒を迎えることができました。ありがたいことです。新卒採用のおかげで法人たるトヨタネは年を取らず、かつ新陳代謝が活発になります。その効用と「文化」は会社にとってかけがえのない資産です。毎年新卒採用ができる会社というコンセプトそのものが会社の最重要なテーマです。
入社式後毎年社長から新入社員に対して1時間の講義が設定されています。総務から与えられるテーマは「経営計画書」による経営の説明なのですが、今年は大きく脱線して、トヨタネに入社した以上知っていただきたいテーマを3つ上げました。

種苗法の改正と4月1日施行について
 日本農業の歴史において農家の自家採種(自家増殖権)は自明の権利あるいは風潮が根強い中、登録された品種(工業で言えば特許を取得した製品や技術)においては、育成者権の保護強化を法律上で明記したということです。国としても優れた品種は知的財産という認識のもと、海外を含んで無断で増殖される状況に少しでも網をかけたいという意志の表れであります。

ゲノム編集について
 遺伝子組み換え技術による食品は欧州同様日本でも抵抗感が強い。一方米国・中国等は積極導入、市場での抵抗感も少ない。今後更に技術開発が進むと予測される(結果として日本・欧州は遅れる)。一方ゲノム編集技術は国民に理解してもらいたいという気持ちが強い(欧州はゲノム編集も遺伝子組み換え同様拒否反応が強いようです)。ゲノム編集は特定の遺伝子をカットする技術、言わば人工的に突然変異を作出するようなもの。本人が明記しない限り、後からゲノム編集技術を使ったかどうかはわからない。今後ゲノム編集を利用した商品は相当出回ることが予想される。

SDGsの取り組みについて(狭くは地球温暖化防止への取り組み)
日本も菅首相が2050年までにカーボンニュートラルを目指すと国会で演説した。農林省においても2050年までに農業分野のカーボンニュートラル(またはゼロ・エミッション)を目指すという方向を打ち出した。同時に「有機農業の推進」に大きくかじを切った。この方針を踏まえ会社としても商品開発・選択の際の重要なポイントと受け取らなくてはならない。また同時に社内におけるSDGsの取り組み強化が大きなテーマとなる。

以上3点がトヨタネ入社にあたって大まかな知識を持ってもらいたい時事問題であると話させていただきました。