2022.07.05 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
今年も7月がやってきた。会社にとっても7月・8月は暦通りHOTシーズン。最繁忙期、またそうなってくれないと困ります。
ところが農家にとっては原材料費である肥料や石油、金属関連資材の暴騰、秋冬にかけて更に値上りしそうな情勢下、作付けをどうすべきか、途方に暮れている。
社内の報告を読むと5h規模でキャベツを栽培する農家は1h減らして様子を見る、施設トマト農家は購入苗から自前の苗に切り替える、しかも7月定植し、年内の相場に期待し、重油価格の動向によっては冬越し再検討との声が聞こえてきます。
高齢化した農家では離農のきっかけになっている。
多くはコストをかけて勝負に出るというよりも、コストを抑えて被害を最小限にしたいという方向に向かっている感じです。
商売する側の我々にはありがたくない話ですが、農家の気持はよく分かる。
仕入は暴騰しているのに、将来の販売価格が見えないからです。
TVの情報バラエティー番組を見ていたら、突然の猛暑が夏野菜にも影響、価格が高騰と伝えていました。3本入っていた胡瓜が2本になった(本当か?私が知るかぎり今年の胡瓜は安値安定と思うが)。
食料品価格の値上りが続く中、給与所得が上がらない家計のやりくりが大変と伝えたいようです。
それはそうですね、しかし仕入れ価格の値上りが続く中、この猛暑に出荷している農家はもっと大変ですよ、そもそも野菜の値が高くなるのは需要が旺盛だからではなく、天候不順で思うように収穫できないからです。農家のイライラのほうが重大です。
尊敬する著名なコンサルタントが毎年数冊の本を出している。
ある会員が「先生読むのが大変です」と言ったところ、その先生は「私は書いているのですよ」と答えたそうです。農家も「書いている」側です。
もう少しメディアも生産者側の声や現場の実態を知った上で報道してもらえないかと案じます。
また国家も肥料や原油の高騰に対して支援策を用意するが、農家がとても飲めないような条件を出す。
例えば施肥(化学肥料)2割低減を支援金の要件とする。農家は消費者に喜んでもらえる品質の農産物を出荷するために現在の施肥設計をしている。
ほとんどのプロ農家は2割削減すれば収量も品質も確実に低下すると思っているはずです。好んで余剰な施肥をしているわけではない。
机上、かつ上から目線で打ち出す緊急施策、経済的に少しでも救おうという意味ではありがたいが、一方的な条件提示は農家のプライドや矜持を逆なですることもあるということも知ってほしい。
長期的な政策誘導と緊急対策は分けて考えるべきだ。今溺れかかっている人に水泳法を教えなきゃと言っても何の役にも立ちません。
何れにせよ今年の秋冬野菜市場は波乱含みです。また毎年言われる異常気象の影響も心配です。
私は園芸農家が作る国産の新鮮野菜の相場のあり方、また将来に渡る食料安保方針とも相まって、
農家の皆さんが喜んで再生産に励める価格とはどうあるべきか、また新鮮で安全な国産フレッシュ野菜の価値について、もっと広範囲な国民的議論が必要と思っています。
もし今年の冬野菜が大暴落すれば、多くの農家は2回KO負けか、粘っても5回テクニカルKO負けになるのではないかと危惧しています。
2022.06.10 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
今年も6月となりましたが、ロシアによるウクライナ侵攻は今も続いています。今月も暗い話で申し訳ありません。
EU諸国はロシア産原油・天然ガスを削減する経済制裁に躍起です。
しかしエネルギーより恐ろしい問題がある。それは食糧問題です。
しかも今年だけでなく来年は更に深刻となる可能性が高いと恐れています。
理由は2つ
一つはウクライナ・ロシア産の小麦を中心とする食料貿易が滞ること、
二つ目は化学肥料(特にカリ系、アンモニア系)の高騰と品不足で、本年十分な作付ができないことによる収量の低下と高価格です。
二つ目は来年にかけ特に顕著になるだろう。
日本はまだ衰えたとは言え、世界から買う力と金がある。
心配なのは発展途上と言われている国々、中東の一部やアフリカです。
もともと12年前発生した『アラブの春』も小麦価格の暴騰が発端だった。燃料がないことよりも食べ物がない方が遥かに早く生命の維持を脅かされる。
私の極論を言えば今年の日本は減反などせず、お米を作りたいだけ作らせたらどうかと思う。小麦は価格統制せず国際価格に連動させる。
それでもお米は大量に余るだろうがそれはすべて食糧危機を招くことが予想される国に援助すれば良い。諸外国で日本のお米が気に入られるとは思えないが、本当に飢餓に瀕している国なら背に腹は代えられないだろう。
弊社でも養液栽培用の肥料はそれなりに扱いがあり、しかもその大半は中国からの輸入に頼っている。
将来万が一極東地域で有事が起こり、肥料の供給がストップしたならば、日本の野菜供給はたちどころに大混乱となる。どんなに中国脅威論を唱えようと、貿易戦争になれば日本の負けである。
一方欧米諸国の潮流は2050年カーボンニュートラル。日本も同様にその理念を公約し、農林省も「みどりの食料システム戦略」を打ち出した。
2050年までに輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料使用量の30%低減を目指すとのこと。
これは今回のウクライナ危機以前に発表された目標であり、ある意味時代には追い風のように見えるが、その理想につながる具体的な技術や道筋が全く見えていない。ここ数年続きそうな危機に対する処方箋がない。ドイツはロシアからの天然ガスパイプラインを止めても、一部石炭火力の復活、長期には自然エネルギーの増大で乗り切る可能性が高い。
肥料不足への対処はエネルギー問題への対処より更に難しい。
長引きそうな肥料価格の高騰と品不足に対する有効な答えを見出さないと2050年までとても持たない。
特に農業はここ1~2年の喫緊の問題だと感じています。
2022.05.13 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
弊社の新年度は5月1日です。ゴールデンウイーク中ですが、創立以来の会計年度です。そして20年近く5月最初の土曜日に豊橋駅前のホテルで全スタッフを集め『経営計画発表会』を行っています。
目的は新年度の数値目標及び中長期の理念をスタッフ全員で共有してもらうことです。思いっきり個性豊かに、しかし組織としては目指すベクトルを合わせよう!これが私なりの狙いです。しかし新型コロナウイルスによるパンデミックで2年間開催できませんでした。かろうじて昨年はWEBで実施しました。今年もまだ新型コロナのリスクはあるものの、なんとしてもアナログでやりたいとの思いから開催にこぎつけました。結果として190名近くの社員が集まってくれました。ありがたいです。
今年の社長目標は、敢えて中長期的な理想論や地球環境問題への配慮ではなく、今最大のピンチを迎えつつある農家に寄り添い、できれば応援団と思っていただけるような行動に徹しようと言うものでした。 以下は経営計画書「第56期経営計画発表に当たり」社員向け社長原文です。
2年を超える新型コロナウイルス禍による「パンデミック」も収束を迎えつつあります。幸い社内においては、大きな混乱なく乗り切れそうな状況となりました。ひとえに関係者一同の意識の高さ、努力の賜物と厚く感謝します。しかしポストコロナ社会が、コロナ以前の社会に戻るわけではありません。大きな地殻変動が起きたことは間違いありません。会社としても、また個人としても新時代に適合する働き方、生活スタイルが求められています。営業もアナログ一辺倒から、あらゆる角度・手法を用いてお客様への接触・認知を図る必要があります。
一方今回のコロナ禍は国内農業の重要性をより広く国民に認知させたと思う反面、現実の農業現場では、需要減による市況の悪化と生産資材価格の高騰のダブルパンチで、かつてない厳しい局面を迎えています。今後は更に地球温暖化防止対策に伴う制約条件も増大する見通しです。政府も2050年カーボンニュートラルに向け「緑の食料システム戦略」を発表しましたが、具体策についてはまだ藪の中です。将来を予見するにはあまりに未知数が多く、多くの農業者も近未来に明るい展望を描けない状態が続いています。
それでも多くの農家はあらゆる方策を練り、農業の未来を信じて努力を続けています。弊社のミッションは頑張る農家の最も頼れる応援団になることです。第56期の社長方針は、「頑張る農家が頼るNO1応援団を目指す!」とします。
会社としては引き続き地域密着営業を基礎と位置づけた上で、全国の農業に役立つ会社を目指します。少子高齢化と人口減少社会においては、全体の需要も減少傾向となりますが、頑張る農家の支持を一人でも多く獲得できるならば、まだまだ当社が活躍できる市場は大きいと思います。頑張る農家からは弊社がどう見えているのか、その視点に集中して問題点を抽出し、より大きな変革を継続していく決意です。社員を始めとする関係する皆様の絶大なご協力をお願い申し上げます。
2022.04.07 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
春4月 桜は散りましたが、新緑映える素晴らしい季節となりました。
弊社も7名の学卒新人を迎え、実質上の新年度がスタートしました。
今年も頑張るぞ!と意気込む季節ですが、相変わらず新型コロナウイルスの収束が不透明な上、ロシアによるウクライナ侵略戦争の勃発、連日の悲惨なニュースに心が痛みます。歴史的な転換点となることは間違いなく、現時点で素人論を語ることはできない。
唯一ワクワクしているのは、今年のメジャーリーグ。大谷翔平だけでなく、期待できそうな日本人プレーヤーが目白押し、楽しみです。
その中で身近にもっと気がかりなことがある。思いつく言葉は「沈黙の春」。自分の職業上の経験からみても今年の春ほど、農家に底知れぬ不安を与えている年はないのではないかと思う。
1973年第4次中東戦争が勃発、中東諸国の原油禁輸措置を発端に「オイルショック」が発生、凄まじいインフレと物不足不安(実態は不足はなかった)が発生し、象徴的にはトイレットペーパー騒動が起きた。農業界においても、ビニール価格の高騰と品不足不安から多くの農家がこぞって買いに来てくれた。もう時効と思うので正直に言えば、会社はとても儲かったようだ。そりゃそうだろう。インフレ以前の在庫が豊富にあり、インフレ後にお客さんが殺到したのだから。
2022年春 凄まじいインフレとモノ不足が予想されている。肥料・飼料は値上がりだけでなく、供給不足も噂されている。原油価格の上昇も先が見えず、世界的な物流コストは今回の戦争によって更に値上がりするだろう。しかし50年前の石油ショックのようなことは全く起きていない。農家はすでに高くなった原材料費と全く上がらない販売価格の間で消耗している。更なる仕入価格の値上がりはほぼ確実だが、「安いうちに、在庫があるうちに買っておこう」という気にもならないようです。50年前は高度成長の時代、仕入費が上がっても、しっかり作れば儲かるはずと多くの農家が信じることができた。 しかし2022年 農家にとっては「沈黙の春」です。短期的には日本農業最大のピンチです。
それでも夢と希望を持とう。今回のコロナ禍による自粛・戦争の恐怖は、家庭で国産の新鮮野菜を食べられることがどれだけ「幸せ」なことかを多くの国民が実感したでしょう。また食料安全保障の重要性もより多くの国民の共通認識になるはずだ。中長期的には農業の重要性は益々高まるはずです。「幸せいっぱい、花いっぱいの春」が来ることを信じてがんばりましょう。
2022.03.03 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
核兵器大国であるロシアが、独立した隣国に正面から軍事侵攻したことは、21世紀の驚愕の事件として世界史の教科書に載るかもしれない(2022年3月1日現在 今後の展開不明)。この事実は日本の憲法改正や自衛体制のあり方をめぐる世論にも大きな変化をもたらす可能性がある。しかも長期に渡って深刻な議論が続くと予想する。
また同時に小生が関わる分野として、世界の食糧問題そして日本の食料安保にも重大な影響があると予感する。国民の多くがより真剣に議論を交わし、新たなコンセンサスが形成される可能性がある。短期的には小麦とトウモロコシ・大豆の価格上昇によって、畜産農家に打撃が及び、街のパン屋さんも値上げの選択を迫られるだろう。近頃はTVでも食の話題は人気テーマ、私も好んで見るのですが、フランス人にとってのバゲット、イタリア人にとってのパスタは日本人のうどん好き・ラーメン好きとはまた違う次元の重要度のような気がします。今でも日本人にとっては「お米」がアイデンティティの中心だと信じています。本論と外れるが日本のお米は余剰気味で値も下がっているので、パン好きな日本人もこの際お米の消費を増やしてくれるとよいのですが・・・。
本論に戻りましょう。日本においても食料自給率の向上や国内農業の重要性意識は益々高まるでしょう。ウクライナには申し訳ないがそれは中長期的に日本の農業にとっては良いことでしょう。
しかし一方で原材料価格や燃料価格の上昇が即生鮮農産物価格の上昇につながるわけではないことはどうしても消費者に知ってもらいたい。
ニュースで原料価格の高騰で生鮮農産物の価格も上昇していると報じていたが、その報道は間違っている。生鮮農産物価格は市場の需給と国民の購買力によって決まり、生産コストの上昇に応じて販売価格が上がるわけではない。くどいと言われるだろうがこの点はどうしても強調しておきたい。多くの消費者が意外と知らない事実だからです。競争の激しい零細な街のパン屋さんやうどん屋さんもなかなか値上げできない点は似ているが、それでも値上の決定権は持っている。
近年SDGsの観点から「フェアトレード」という概念も理解されるようになってきた。フェアトレードは人権抑圧や低賃金、児童労働、地球環境破壊防止の観点が強いので、上記の議論とは違うことは承知しているが、国内農業の重要性についての議論をすすめると認識ギャップを感じることが多く、その時に思いつくのが「フェアトレード」という言葉となります。ともかくも今回のロシアの蛮行は人類の生存に関わる領域の意識変化、市民の行動変容まで及ぶ可能性があると感じています。
2022.02.16 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
今年の冬は例年以上に寒い日が続いたような気がする。地球温暖化と言われる中、ブレが激しくなっているのだろうか?
それでも今年は春が待ち遠しい。新型コロナウイルスによるパンデミックから開放される日が近いのではとの期待が上回っている。
「冬来たりなば春遠からじ」日本の古いことわざだと思っていたら原典はイギリスの詩人シェリー「西風に寄せる歌」の一節「If winter come, can spring be far behind?」であるとのこと。
この原稿を書いている2月15日現在、13都県の蔓延防止措置が3週間延長され、3月6日までとなっている。おそらく今がピーク、あるいは少し減少傾向と思われるので、もう少し我慢すれば第6波が終焉すると強く期待している。仮に第7波があったとしてもかなり穏やかな形になるだろうと信じたい。
梅の花が咲き、桜のつぼみが確認される早春は私にとっても大好きな季節です。
新卒採用活動もこれから本番を迎えるが、弊社でも現状はすべてNet配信、Net選考。大事な青春時代の2年間をコロナ禍で活動が制約された学生は、私の目線からは大変気の毒だと思うが、彼等にとって2年間の経験は一部常態化(普通のこと)しているのではないだろうか?
そう考えると今後の社会における行動様式は大きく変わるであろうと想像する。
農業も大打撃、冠婚葬祭や外食産業に依存する農産品は暴落した。仕入原料のインフレと販売商品の下落が追い打ちをかける。食料廃棄の低減運動は社会にとって良いことだが、農産物市場にとっては縮小を意味する。今後地球環境問題・温暖化対策がどのような変数となってアウトプットされるのかは未知数、正にいばらの道です。
それでも今回のコロナ禍を通じて多くの消費者が、国産の新鮮な野菜や果物を食することの価値観、幸せを今まで以上に感じてくれたなら、中長期的には農家にも明るい未来があると信じたい。
「冬来たりなば春遠からじ」この言葉を念じて、桜の頃にマスク無しで賑やかに楽しい宴会、美味しい食事、ついでにお酒も気兼ねなく飲めたら嬉しいですね。
2022.01.11 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
謹賀新年 あけましておめでとうございます。正月はありがたい。年を取るたびに頭の中はウイルスだらけになりますが、新年はウイルス除去を実行しようとする気にさせる。例えば長年お付き合いのあるお客様や知人に対しても、初めてお会いする位の気持ちで接するように心がける。算盤で言えば「願いましてはご破算にて」の気持ちで世界を見直して見ようと。そうするとたまに今まで全く見えなかった視点が見えることもある。年を取るということは頑固になる、価値観が固まって自分にとって心地よい状態しか受け入れられなくなるからだろうと思いますが、そこに柔軟さや変化への挑戦欲が加わらないと、せっかくとった年の価値がない、そんな前向きの気持ちにさせてくれるのがお正月だと思っています。
それにしても世界情勢は混沌、各地で紛争は絶えず、地球温暖化を巡って「原子力」の再評価も盛んに行われています。一方でやや強制的な二酸化炭素排出削減施策が、有用資源の価格高騰につながっているのも間違いない。
経済活動の継続性と環境目標達成への努力をウインウインの関係にできなければ、どこかで「破綻」が生じるだろう。人間とはなにか、民主主義や資本主義のあり方はどうあるべきなのか真剣に問い直す必要がある。もっと具体的には成長率至上主義からの脱却や「債権の暴落」懸念への対処も見据えながら、未来の舵取りを行うのは至難の業だろう。前にも書かせていただいたが「地球が危ない」わけではなく「人類が危ない」のである。個人的なことですが私にも孫ができた。孫は可愛い。無事に一生を終えることができるなら西暦2100年に生存している可能性は高い。2100年の人類のために何をすべきなのか、全くみえてこない。いわば無責任状態です。孫がおばあさんになった時、はるか前に死んだおじいさんの時代をどう評価するだろうか?
現実に戻ろう。卸物価が高騰する中、相変わらず生鮮青果物市場は低迷を続けている。我々にとって大切なお客様である農家の経営状況はますます厳しい。今環境のみを優先させて、コストの高い農業を提案できるような状況にはない。しかし近い未来には農家にとっても低コスト・高生産性に繋がり、しかも環境に優しい商品の開発や販売ができる会社でありたいと願っている。
SDGsへの取り組み、2050年カーボンニュートラルを志向しつつ、しかも農家にとっても価値のある提案ができる会社を目指そう、2100年のために。そんな想いだけは強く持っています。
2021.12.08 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
2021年後半は値上げラッシュの年として歴史に記憶されるかも知れない。
超マクロ視点ではウイズコロナ時代を迎え世界の需要が旺盛となる一方、CO2排出産業の供給抑制による品不足が大きな要因ではないだろうか。
需要旺盛による秩序あるインフレは歓迎だが、供給抑制によるインフレはスタグフレーションを招きかねない。日本はその最右翼だ。
更にスタグフレーションは零細業種を直撃する。まさに日本農業はそれに当てはまる。
このピンチを自分なりになんとか解説したい、この思いを何とか伝えたい。
食品と生鮮食料品の違いをよく見てほしい。
大手資本の「食品」は値上げラッシュです。
小麦関連製品・油脂製品・冷凍食品・加工食品は軒並み値上げを発表している。
大手食品企業には自ら値段を決め、価格を上げる力があるからです。
一方多くの消費者の暮らし(年収)は良くなっていない。食料品に向けられる家計支出は増やしたくない。
仮に月の食料向け支出を10としよう。「食品」と「生鮮食料品」の支出割合が5:5だと仮定します。
今回「食品」の大幅な値上げによって支出割合が6になったとします。
すると多くの家庭では「生鮮食料品」の支出を4にせざるをえなくなる。可処分所得が上がっていないからです。
生鮮食料品の殆どは農家が生産し、アダム・スミスの資本論が通用する「市場」で取引される。
買手は4しか購買力のない消費者相手なのだから、高値はつけられない。
今年の冬の生鮮食料品相場は相当な異常気象による供給不足が発生しない限り、高くはならない。むしろ安くせざるをえないだろう。
一方農家にとっては、生産のための原材料仕入れは大幅なインフレ、特に重油や肥料・飼料価格の大幅な値上がりは大打撃。
本来生鮮品も自ら値決めができるなら最低でも10%以上は値上げしたいところだろう。
仕入生産資材の大幅な上昇、そして販売価格の下落という2重苦に耐えるのにも限界がある。だから6次産業だ、直売やネット通販を考えるべきだというのは暴論だ。
ほとんどの農民は市場を通して顔の見えないお客様のために精魂込めて高品質商品を生産しようとしている。
日本農業にとってかつてないほどのピンチです。
2021.11.09 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
はや今年も11月。
彼岸花が秋の到来を教えてくれた。
程なく自宅近くの金木犀の花が咲き始め、秋本番を告げた。
でもおかしいぞ、10月下旬また金木犀の花が咲いた。
でも1回目の開花ほど香りはない。
あれ、1ヶ月前の香りは幻だったのか?
よくよく調べてみると金木犀は2度咲きする年もあるらしい。
これも異常気象なのか、秋冬野菜相場がどうなるのだろうか、職業柄直感的に不安がよぎった。
案の定新聞紙上には11月の野菜市況は前年より更に安くなる見通しとのこと。
長引くコロナ禍の中で、多くの国民は食糧問題により敏感になっている。
自給率の低下と担い手の高齢化で日本農業は崩壊するのではないかと心配している人も多いでしょう。
更に国際的な穀物市況の高騰で、スーパーに並ぶ食料品は値上げラッシュです。
ただその割には今回の総選挙において農業問題は大きな争点にならなかった印象があります。
長期的視点では食糧問題は人類最大の課題であることは間違いない。
ただ短期的な視点では、次の理由で日本農業は最大のピンチを迎えている。
① 生産過剰と市場価格の暴落懸念
2020年産食料米は過剰在庫を抱え、更に2021年産もやや豊作、来年の昨付け調整に国は頭を抱えている。
現状のお米価格でも専業農家の採算性は厳しい。
ここから更に10%、20%下がれば壊滅的な事態となりかねない。
園芸農家においても、今年の冬は豊作貧乏の危険性が高い。
現場が恐れているのは「生産不足」ではなく、「生産過剰」による暴落懸念という事を是非多くの人に理解してもらいたい。
② 卸売価格の暴騰と小売価格の下落
農家が生産のために必要な資材は卸売価格の分類です。
石油・肥料・石油由来資材・飼料価格等の大幅値上げは農家の努力による生産性の上昇を遥かに上回る勢いです。
生産者(農家)にとっては仕入れコストの大幅な上昇です。
しかし多くの農産物は市場で取引され、小売市場で流通する。
その消費者価格は上がるどころか、むしろ下がっている。
今年の冬は更にその傾向が強まりそうな情勢下にあります。
③ 後継者の躊躇
農業の後継者問題はかなり前から深刻であることは変わりないが、それでも「農業」に誇りと生きがいを持って飛び込もうとしている若者はかなりいる。
しかしそうした人にとってもこの数年の苦境を目の当たりにして、躊躇する動きが顕在化してきた。
結果として担い手の高齢化に拍車をかけることになっている。
小生は業者の立場なので、②にも関わりがあり、自分の首を絞める様な内容ですが、多くの人が「食料危機」を唱える中、現場の苦悩との認識ギャップを少しでも理解していただこうと書いてみました。
2021.10.01 [ 社長のつぶやき | 日々のつぶやき ]
地産地消といえば、一般的には農産物についての概念と思われています。
近い言葉としてイタリア発の「スローフード」、韓国での「身土不二」運動などが有名です。
集中よりも分散、人工的な物よりも自然に近いものが大事というイメージに繋がります。
地産地消のメリットは大きく2つあります。
一つは「フード・マイレージ」が小さく、結果としてCO2排出量低減に役立つという実利的な面。
もう一つは地元産の伝統食材を大事にすることが健康に良いというイメージです。
ほとんどの場合「地産地消」は肯定的な意味合いで使われることが多いと思います。
かつて市の農業委員をさせていただいた折、こんな討論がありました。
一部の委員が地産地消の推進を唱えた際、猛然と批判の意見を述べたキャベツ農家が見えました。
「豊橋の甘藍(キャベツ)栽培は典型的な輸送園芸だ。温暖な気候を利用した冬季収穫の一大産地、全国に売ることを大前提としている。地産地消の推進は自らの首を締めるようなものだ」と。
私は大いに納得しました。
日本は緯度的には極めて縦長で、亜寒帯から亜熱帯地区まで有する。
食料自給率の低さをよく問題にされるが、一方で1年を通して国産野菜を食することができる稀有な国でもある。
スーパーマーケットに行けばどの季節でも当たり前のように国産の甘藍・胡瓜・トマト等が並べられている。
意外と消費者はこの日本の特異性を理解していないような気がする。
カロリーベース食料自給率の低下を大問題と考える人の立場もわかるが、野菜・果樹:花卉生産において非常に恵まれた国であることも間違いない。
水も概ね豊富でしかも良質です。
北海道に住む人が地産地消で冬にトマトを食べたいと思うなら、膨大なエネルギー支出(CO2排出)を覚悟しなければならない。
こと日本においては「地産地消」よりも「適地適作」のほうがエネルギー収支上も有効だろうと思います。
尤も、旬の露地野菜以外は食べないと言う人には、「地産地消」は大切な概念ですが、カーボンゼロを目指す2050年においてもかなり少数派だろうと推察します。
そんな時ふと思い当たったのがエネルギー、とりわけ電力の地産地消の取組こそ大事ではないかということです。
東京都に食料の地産地消を求めても無理だと思うが、電力ならもう少し地産地消を考えることができるのではないか?
もちろん原電が前提ではなく自然エネルギーを前提として。大都会には、たとえ景観を損ねても、大型の海上風力発電の景観を受け入れてもらうしかないのではないか。
電力の地産地消は技術的にも経済的にも莫大な課題があるようですが、少なくとも2050年カーボンニュートラル、地球温暖化防止の観点からも電力の地産地消、あるいは自給自足概念の方が、食料の「地産地消」よりも遥かに人類生存上の重要問題だと思うこの頃です。